巨大用船ビジネス進水、意欲満々の日本郵船
日本郵船、川崎汽船の海運大手2社が、三井物産と組んで大水深掘削船(ドリル船)の用船ビジネスに参入する。韓国・三星重工業に発注済みで、竣工後ただちにブラジルの国営石油会社・ペトロブラス社に貸し出す。
期間は2012年1月から10年、さらに10年延長可能なオプション付き。水深3000メートルの鉱区から、最大7000メートルまで海底を掘り下げて海底油田を試掘する。短期契約が主体のドリル船は世界に20隻しかなく、需要過多で用船料が1日50万ドル超にハネたこともある。用船料急騰に目を回したペト社が、異例の長期契約に踏み切った。
総投資額820億円のうち650億円は、ノルウェー輸出金融公社と蘭INGグループ、仏ソシエテ・ジェネラルほか日本の3大メガバンクがプロジェクトファイナンス(事業融資、以下PF)。残り170億円のうち140億円は、特別目的会社に出資する形で日系企業が負担する。最大の出資比率は日本郵船の33・70%(57億円)。
日本郵船は合弁会社で地球深部の科学探査船「ちきゅう」の運航を政府から請け負ってきた。そのノウハウが生かせる新規事業を探していたところに、今回のブラジル案件が舞い込んだ。リーマンショックで銀行団組成に1年強を要したものの、超長期契約の締結やPFを用いることでリスクを抑えたという。
競合他社には米石油メジャー系のマリコン(海洋建設業者)が居並ぶが、日本郵船には「ちきゅう」で培った知見がある。「今後はブラジルに限らずドリル船を展開したい」と長澤仁志常務経営委員は意欲満々だ。大型タンカーを改造するなどし、ドリル船から隣接領域のFPSO(浮体式石油生産・貯蔵・積出設備)にも新事業を広げる方針。
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