「個人向け国債・変動10」の欠点も見ておこう。購入1年経つといつでも「元本で」換金できるが、過去2回分の利息をペナルティとして支払わなければならない。実質的に元本割れしないとはいえ、これは確かに欠点だが、すでに手にした利息を返すだけなので、大きな欠点ではない。一応、「個人向け国債・変動10」は「すぐに使うお金ではない、まとまったお金」の運用に特に適すると言っておく。
ほかの金融商品と比べて不利になる可能性
厳密にいうと流動性難は減点材料なのだが、普通の個人の場合、10年間余計な金融商品を買わずに(買わされずに?)済む点が、結果的にメリットになることが少なくないのではないか。
流動性、利便性の点では、当面出し入れ自由で、送金やカードの決済にも使える銀行の普通預金に軍配が上がる。付け加えると、定期預金、債券など、他の運用手段の利回りが下がったので(経済学風には「機会費用」が小さくなったので)、普通預金の評価は金融平時と比べて目下大幅に向上している。
「個人向け国債・変動10」が、利回り上、ほかの金融商品に対して大きく不利になる可能性があるのは、短期金利が先行して大幅上昇し、長期金利の上昇が遅れる場合だ。しかし、米国の例を見ても、政策金利のゼロ金利が解除されるよりも、中央銀行による長期国債の買い入れが終了する方が先なので、先行して上がるのはむしろ長期金利の方だろう。いきなり短期金利から上がるのは、インフレの昂進を金融引き締めで鎮圧しようとする時だが、こうした状況は当面想像しにくい。
最後に、もう一つ、「個人向け国債・変動10」に関連する重要な注意を申し上げる。この商品は、証券会社、銀行、ゆうちょ銀行などの窓口で買えるが、これを買いに行った場合に、窓口で他の商品(投資信託や保険など)を勧められても、「絶対に」勧められた商品を買ってはならない。
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