激売れ!無印の「海外発商品」が強いワケ あの「直角靴下」も"探して"生まれた

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このように世界各地のいいものを見つけるうちに生まれたのが、大ヒット商品の「足なり直角靴下」です。

チェコの知恵が詰まった「足なり直角靴下」

これは、チェコに住んでいた方から、「近所のおばあちゃんの編んでくれた、かかとが直角になっている靴下がすごい!」という情報が寄せられたところから話が始まります。

一般的に売られている靴下のかかとの角度は120度です。これは、機械で量産できる靴下のかかとの角度が120度であることと、折り畳んだときにキレイな形になるように、ということから決められているのだそうです。

一方、チェコの靴下を実際に取り寄せてみると、確かに、かかとの部分が90度になっています。そして、足のかかとと同じ角度になっている靴下を履くと、かかとがすっぽりと収まるのでずれにくく、履き心地がいいことがわかりました。

しかし、靴下メーカーの人にその靴下を見てもらっても、どうつくればいいのか見当がつきません。そこで、靴下を編んだチェコのおばあちゃんの娘さんに日本に来てもらい、編み方を伝授してもらいました。教わったことをもとに、編み機と素材を開発し、ようやくファウンド・ムジ流の靴下が生まれたのです。ちなみにこの商品は、2006年から2014年までで累計4500万足を売り上げるロングセラー商品となりました。

世界の各地に“深く”入り込む

海外展開に失敗する企業が相次ぐなか、無印良品はどうして勝ち続けているのか。過去の海外進出失敗の経緯も振り返りながら、その理由を「仕組み」「商品コンセプト」「戦略」「人材」などの切り口から解き明かす(KADOKAWA、本体1400円+税)

こうして開発された商品は、日本だけではなく、海外でも人気があります。
このことからも、やはり海外で長く使われているものは、それなりの「理由」や「愛される力」があるのだとわかります。それをいかに探し出し、アレンジするかが、無印良品が海外で競争力を持つための命題なのです。

誕生時代のファウンド・ムジと今のファウンド・ムジは、少し中身が違ってきています。どこのメーカーでも真似してつくれるレベルのファウンド・ムジの商品では、もう、時代に置いていかれてしまうのです。したがって、どこまで“深く”入り込んでいけるかが、これからの「見いだす力」には必要です。

各地域に“細かく”“深く”入りこんでいけばいくほど、商品群のレベルは上がっていくでしょう。そして、そういうものが全世界で受け入れられていきます。というより、受け入れざるをえないはずなのです。

なお、ファウンド・ムジでは国内の伝統工芸品のよさを見直す取り組みもしています。

青山の店舗では世界中から集めた暮らしの品々と、日本の伝統工芸品なども取り扱っています。手仕事の作品を愛好しているコアなファンも訪れるような、無印良品の中でも異色の店舗ですので、ぜひ訪ねてみてください。

松井 忠三 良品計画前会長

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まつい ただみつ

松井オフィス社長。1949年、静岡県生まれ。1973年、東京教育大学(現・筑波大学)体育学部卒業後、西友ストアー(現・西友)入社。1992年良品計画へ。総務人事部長、無印良品事業部長を経て、初の減益となった2001年に社長に就任。赤字状態の組織を風土から改革し、業績のV字回復・右肩上がりの成長に向け尽力。2007年には過去最高売上高(当時)となる1620億円を達成した。2008年に会長に就任。2010年にT&T(現・松井オフィス)を設立したのち、2015年に会長を退任。著書に『無印良品の教え』(KADOKAWA/角川新書)などがある。

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