「休めない」日本人をこれ以上増やさない発想 もはや企業に「ポーズ」は求められていない
要因の一つとして、欧米人、特にローマカトリックを信仰するラテン系は「休むために働く」という思想的背景だけではなく、企業側も喫煙所に代わる、「休むことを公認する」代替案の提示に早くから取り組んできた。その代表格がやはりシリコンバレーであろう。
あるIT企業のオフィスを見学したことがある。部屋の壁は一面のホワイトボードが続いており、メモやブレインストーミングのあとが書き殴られていた。通路を見てみると、壁際の奥まったところなど意外な場所に机とイスが置かれ、飲み物やスナックのベンダーは、オフィスのどの場所からも取りに行きやすい中心部に位置している。
さながら、遊び心のある隠れ家カフェのような雰囲気だ。今流行のデザイン思考の影響が大きいと伺ったが、休憩を組織が積極的に奨励していることを、オフィスのデザインが雄弁に物語っている例といえる。
たとえば、フェイスブック(Facebook)。いわずと知れたSNSの世界最大手といってもいいIT企業だ。フェイスブックはオフィスを設計するに際し、ディズニーから2人のコンサルタントに依頼し、随所に遊び心を採り入れた。
そして、オフィスの中庭では、「ハッカソン」と呼ばれる日常業務から離れて数時間でサービスや機能をつくりあげるイベントが定期的に行われている。フェイスブックを一躍有名にした「いいね!」ボタンもハッカソンによって誕生した。フェイスブック本社から車で10分とかからないグーグルでも、ハッカソンは盛んに行われている。
日本でもシリコンバレーに感化されたIT企業が輸入をする形で、ハッカソンが開催されたり、息抜きできたりするオフィス環境の整備が進められつつあるが、「輸入」である以上、米国と同じレベルにまで達していないのではないという印象を受ける。
1~5坪のカフェスペース「5 TSUBO CAFE」
そんな中、昨年末に非常に興味深いサービスが始まった。オフィス家具大手で、「アスクル」の生みの親でもある「プラス」がローンチした「5 TSUBO CAFE」だ。
オフィス内にカフェスペースの設置を提案する新規事業で、雑談を促進するアプリや無料で飲めるコーヒースタンド、手軽に立ちミーティングができる家具など、随所に雑談が生まれる仕掛けが盛り込まれている。
フェイスブックのようなオフィスを構えられるのは理想だろうが、それには莫大な資金と敷地が必要で、いささか現実的とは言い難い。その点、1〜5坪というスペースの中に雑談・息抜きできる要素を凝縮し、手軽にレンタルで始められ、大規模なオフィスリニューアルも必要ない点で、今後5 TSUBO CAFEは現実的な選択肢になり得るのかもしれない。
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