日本も草の根アメリカ議会対策を行うべし
その言葉が非常に印象に残っていたので、早速帰国し外務省に実態がどうなっているかを尋ねた。外務省からは「アメリカの議員は訪中を規制されており、訪中できないはずである」との回答だった。その回答に「中国共産党がこちらをけん制するために話を大きくしていたのか」と当時は納得したものの、結局は中国共産党幹部の話が正しかったことが、ワシントンDCで判明したのだった。
ついでではあるが、他国の外国政治家の招聘制度を調べたが、オーストラリアも日本の政治家を毎年数人招聘しており、シンガポールは「招聘された政治家は好きなときにシンガポールをフルサポート付きで訪問できる」招聘制度を持っている。
ひるがえって、日本の米連邦議会議員の招聘制度はどんどん予算を削られており年間5,6人の政治家しか日本に招待できていない(日米摩擦の時は20人近くの米恋歩議会議員を招聘していたと聞く)。このような招聘制度をもっと充実させることも日本に必要ではないかとつくづく考えさせられた。
ケント・カルダー教授と朝河貫一教授の指摘
さて、『日米同盟の静かなる危機』(邦訳 ウェッジ刊)を書いたジョンホプキンス大学のケント・E・カルダー教授は、同書において、「中国が草の根レベルでアメリカ議会に入っている」ことを指摘している。
332ページには「中国の最近の政治戦略は、ホワイトハウスの方ばかりを見ている日本と正反対でグラスルーツ重視である」とあり、胡錦濤・共産党総書記が訪米したときにワシントン滞在が1日半でその他はマイクロソフトやボーイングに行くなど財界と民間との交流に力点を置いていることを紹介している。
また、100年前に『日本の禍機』を記した朝河貫一(歴史学者 1873−1948)も、その中で、
「支那の政治家は常に米国との関係をもっとも重視せしが」(講談社学術文庫178ページ) と中国のアメリカ重視を説き、
一方で日本がアメリカを誤解している以下のような点を紹介している(同156~161ページ)
1.「米国政治の腐敗」
2.「貧富の隔絶」
3.「民衆の趣味の低きこと」
4.「米国の教育は全く実利的にして児童に倫理すら教えず」
5.「米国の学問にいたるまでもまたひとえに処世のためにして、真理の探究に切ならず」