漂流続くam/pm、ローソンが買収断念
5月19日、ローソンはエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)買収を撤回すると発表した。昨年7月から7カ月間もの話し合いを経て基本合意に至ったが、交渉は一転して白紙に戻った。
破談の原因は商標権をめぐる対立だ。am/pmの商標権は米エーエム・ピーエム・インターナショナルが所有する。am/pmの相澤利彦社長(当時)は今年2月にローソンと基本合意した際、「米社とのライセンス契約は問題にはならない」と述べていた。親会社であるレックス・ホールディングスも基本合意に至るまで、米社にローソンとの交渉の事実を報告していなかったという。
基本合意の報告を受けた米社はam/pmブランドの消滅に懸念を示した。というのもローソンの新浪剛史社長は表向きブランド存続を表明したものの、ローソンはサンチェーンや九九プラスなど過去すべての買収案件でブランドを統合してきたからだ。
米社とam/pmとの契約では、100店舗以上の看板維持が義務づけられていた。だが米社は買収合意の知らせを受け、3月下旬にレックスに対し全1100店のうち700店もの看板維持を条件に挙げたという。
レックスを通じて要請を受けたローソンは、700店の看板維持という条件の見返りに、買収金額145億円の引き下げを申し入れた。だがレックス側の取引金融機関が、交渉の長期化を懸念してこれを拒否。話し合いは決裂した。あっけない幕切れに業界では「米国側との確認不足だろう。あまりにお粗末」との声が漏れる。
次なる提携は不透明
am/pmは過去の高コスト体質を抜け出せず、2008年12月時点で139億円の債務超過に陥っている。3月末にはローソンから新社長を迎えるべく相澤社長が退任。だが買収が白紙となり、5月18日に急きょ、本多利範副社長が社長に昇格した。
レックスはコンビニ事業からの撤退を固めており、am/pmには新たな提携先の確保が不可欠。だが米社が看板維持を条件に掲げるかぎり、同業コンビニによる買収は困難を極めるだろう。実際、セブン−イレブン・ジャパンは独立路線を貫き、ファミリーマートは店舗統一を買収の条件に掲げている。店舗数の飽和や低価格志向への対応など業界が抱える課題は多く、異業種の参入も容易ではない。
長期化する交渉を尻目に、大手コンビニがam/pm店舗を回り看板替えを促していたという話もある。こうした“切り崩し”が進めば、都心で多店舗展開する強みが薄れ、提携先探しはさらに難航しかねない。am/pmの漂流は今後も続きそうだ。
(田邉佳介 =週刊東洋経済)
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