コメ国富論 柴田明夫著
減反続く高コスト・高齢化の日本農業に絶望的でありながら、食料自給率をめぐる議論は活発という展望を欠いた現象が見られる。
これに対し、世界の食料需要は増大する一方なのに供給には土地・水・気候の大きな制約があって、穀物価格の高騰は必至であり、日本は早急に食糧増産に向けて舵を切るべきだ、と本書は主張する。その論拠は、日本の農業と農業政策の歴史的検証、食品流通、世界の農業事情を総合的に追究することで得られている。
那須に育ち、農業経済を学んだ商社エコノミストとしての視点が独自の提案を生んでいる。コメの増産など非現実的だし食料危機など杞憂だと考える日本人は一読、発想の転換を迫られるだろう。戦略的にコメを重視することの重要性と現実性が丁寧に展開される。単なる守りの農業論でなく輸出まで視野に入れた異色の農と食の本。コメこそ日本を救う最強の資源だとする著者の熱意がひしひしと伝わり説得力十分だ。(純)
角川SSコミュニケーションズ 1890円
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