【産業天気図・損害保険】損保各社にもサブプライム問題が波及、来09年3月期も明暗分かれる

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損害保険業界は2008年度も「曇り」空が続きそうだ。これまで、スーパーシニア(AAA)クラスのCDO(債務担保証券)しか保有していないため、サブプライム問題は影響はないと主張してきた損保各社にも影響が波及し始めている。あいおい損保<8761>は今08年3月期には関連損失を920億円計上、6期ぶりの最終赤字に転落する見通し。ミレアホールディングス<8766>も同期に63億円の関連損失を計上する。また、三井住友海上<8752>も同期に4300万円の評価損を計上する一方、モノライン関連で159億円の持ち高を抱えている。
 なかでも深刻なのが損保ジャパン<8755>だ。同社はサブプライム関連の金融保証保険のうち、精算条項付きの保険に関して340億円の保険金支払いが必要になるとして、支払い準備金の積立を行った。このほかにも精算条項付きの保証保険280億円、精算条項がない保証保を1730億円も抱えている。同社は残りの2010億円はデフォルトの可能性は低いとして、依然、損失の引き当ては行っていない。
 だが、米抵当銀行協会(MBA)が3月6日に発表した2007年10~12月期の住宅ローン延滞率は5・82%と、2四半期連続で1985年の調査開始以来の最高水準を記録。サブプライムローン延滞率は17・3%と過去最高の17%台乗せとなっている。同期の住宅ローンに対する差し押さえ率も全体で2・04%、サブプライムローン向けで5・29%と調査開始以来最高を更新している。
 また、米連邦準備制度理事会(FRB)が1月に実施した貸出調査でも、米国の銀行は幅広い分野で貸出基準を厳格化。年明け以降、FRBは矢継ぎ早の利下げに踏み切ってきたが、金融機関の貸し渋りを利下げだけで抑制することはできず、次回4月実施予定の調査でも貸し渋りは拡大することが予想される。貸し渋りの厳格化に伴い、住宅ローン延滞率は今後も上昇、つれて格付け会社が住宅担保ローン(RMBS)やCDOを格下げすることも予想される。そうなったとき、各社のサブプライム関連の損失が拡大することが懸念される。
 一方、ニッセイ同和損保<8759>と富士火災<8763>にサブプライム関連の投資はなく、日本興亜損保<8754>もサブプライム関連商品を約10億円保有しているが、07年12月末時点での評価損は3400万円にすぎず、今後も影響はないとみられる。あいおい損害保険も、サブプライム関連のABS−CDOとSIV債権とで実現損300億円、2月22日時点の想定元本680億円の約9割に当たる評価損620億円、計920億円を引き当てている。引き当て未計上の60億円も今後、できるだけ圧縮していく方針だ。今08年3月期にサブプライム関連の損失を実現損、評価損として一掃しているため、来09年3月の経常益は平準化することが予想される。
 また、各社とも08年春から、自動車保険を始め、特約等を簡便化した新商品の発売を予定しており、商品改定に伴い国内の正味収入保険料は下支えされる可能性が高い。07年度に不払い対策のために計上されたシステム経費等も徐々に減少。09年3月期の損保各社の業績は、本業は持ち直しの傾向がみられるだろうが、サブプライム問題の影響で明暗が分かれる可能性が高い。
 なお、来09年3月期は自賠責保険の料率引き下げが予定されているが、自賠責保険は保険料や運用益などで利益も損失も出ないのが原則とされている。このため、損保各社の経常収益は見掛け上、減収となるが、経常利益への影響はなく、見掛けの経常利益率は改善することとなる。
【筑紫 祐二記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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