東証マザーズは”安楽死”へ、大きすぎた個人投資家の犠牲
株価は、昨年11月26日の3円が直近高値。その後は1円買い・2円売りの注文がにらみ合ったまま終焉を迎えた。東証は昨年、こうした「1円企業」を狙い撃ちする形で、時価総額が株数の2倍未満の銘柄を上場廃止にするルールを作っている。ニューディールは昨年12月時点でこの基準に抵触している。
また、ニューディールを担当する監査法人ウィングパートナーズは2月、監査体制の不備を公認会計士・監査審査会に指摘され、金融庁の行政処分を待つ身だ。監査法人業界の問題企業への態度は昨年ごろから硬化、監査報酬の大幅値上げを吹っかけて、縁切りに誘導するのが流行になった。
その一方で、監査難民と化した問題企業も引き受けるウィングパートナーズを「駆け込み寺」と見なす市場関係者は少なくないが、監督官庁ににらまれている以上、間違っても監査にさじ加減はできない。上場廃止は避けられなかったのだ。
これまでライブドアやカネボウ、西武などが粉飾決算で上場廃止になった。東証は自主的に審査したと説明するが、実際は捜査当局による「有罪」の判定を援用しているにすぎない。東証上場部の元担当者は「問題企業を独自調査しようにも抜き打ち検査はできず、企業の言い分を受け入れるしかなかった」と苦々しく打ち明ける。
しかし、上場維持基準や監査が厳格化。大量の新株やMSCB(下方修正条項付き転換社債)発行など株価暴落を伴うファイナンスには取引所が中止を勧告する。こうした調達案件をさばく資金ブローカーと呼ばれる人種の中には闇社会と通じる人物が多かったが、司直の手が伸びて身動きが取りにくい。匿名出資ファンドにも規制がかかり、一般株主を犠牲にしたファイナンスは封じられた。
東証マザーズは役割を終えた?
新興市場草創期の「未来のソニー、ホンダに成長資金を」との触れ込みは投資家を魅了した。将来の経済成長を考えれば、ベンチャー企業への資金供給パイプを整備する必要性は今も疑いようがない。かくして個人金融資産1500兆円の一部を企業育成に投じるべく、市場と企業を用意したら、マザーズもヘラクレスももくろみどおりに個人投資家が売買代金で最大シェアを占めた。そこまではよかったが、投資家の屍累々では話にならない。