【産業天気図・ソフト・サービス】金融需要が減速気配、08年度は通期で「曇り」

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2007年度は金融向け開発で活況だったソフト・サービス業界だが、08年度に向けては一転、金融業界の投資減速が懸念材料になりそうだ。通信業界の投資復調、内部統制需要の伸びなどに期待感もあるが、08年度の天気見通しは前半・後半を通じて「曇り」とみている。
 直近の日銀短観(07年12月調査)によると、金融機関の07年度のソフトウエア投資計画は前年度比28.2%増で、前回調査から1.1ポイント下方修正された。内訳をみると、3.5ポイント下方修正した銀行業に最も失速感が色濃い。メガバンクの統合関連投資が一巡しつつある上に景気への警戒感が重なっている。この減速感は08年度も続くという見方が業界の大勢だ。証券関連を柱に金融向けに強い野村総合研究所<4307>は、08年度に向けた足下の受注動向は底堅いとしながらも、株式市場の不透明さから、顧客企業が08年度予算を絞る可能性があるとも警戒している。また、独立系上位で証券向け開発が強いCSKホールディングス<9737>は傘下の証券会社が今07年度、赤字決算となる見通しで、08年度も見通しは厳しいようだ。
 金融以外では、NTT主導の次世代通信網(NGN)事業が材料のひとつとなりそうだ。この分野の主要企業としては、年1000億円規模で投資を傾注しているNEC<6701>のほか、富士通<6702>、OKI<6703>など電機関連のソフト・サービス企業が挙げられる。ただ、通信事業者側の設備投資は当初想定されていたよりも小規模となる見通し。ソフト・サービス業界でも、受注額が見込みを下回る企業が出る可能性がある。
 従来から日本のソフト・サービス業界では、金融や通信の一時的需要への依存度が高いことが業界企業の業績変動要因となっており、中小を含めた広範な企業のコンスタントなIT投資を喚起する業界努力が必要とされていた。08年度は特にこの努力が企業業績を分ける可能性がある。中堅群ながら企業のIT需要掘り起こしに長ける大塚商会<4768>やオービック<4684>の手堅さが光るのではないだろうか。
【杉本 りうこ記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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