声優に憧れる人が知らない「厳しい収入事情」 大塚明夫「多くの声優はローンが組めない」

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1番下に位置するのが「ジュニア」。これは新人養成期間で、仕事1本当たり1万5000円の報酬が基本です。3年間の新人期間を過ぎると「ランカー」と呼ばれ、出演作品の尺30分に対して1万5000円のランク15を始点に、1万6000円のランク16、1万7000円のランク17……というように1000円単位で値段を上げていくことが可能になります。

30分アニメ一クール(12回分)の主役に指名されたとして、その声優Aがランク15なら、ギャランティーは1万5000円×12で合計18万円というわけです。

また、作品が二次利用されると、「転用料」が発生します。TV/DVD/ネットと3チャネルにわたって展開されれば、金額がだいたい2.4倍ぐらいになるでしょうか。ランク15なら、大体43万円ということになります。「なんだ意外ともらってるじゃねえか」と思われるかもしれませんが、3カ月みっちりやってこれです。主役級の人ですら、これだけでは食っていけないことがわかってもらえるでしょう。

設定は自己申告制ですが、所属事務所のマネージャーなどの判断も関わってきますから、実際はあまり突拍子もないランクにはできないでしょう。呼ばれた仕事が映画だろうがアニメだろうが、基準となるのは原則的に作品の長さであり実働時間ではありません。

30分アニメのために何時間スタジオに詰めていようと、ランク15なら支払われる金額は1万5000円です(状況に応じて色をつけてくれる制作会社や声優プロダクションもありますが)。

1番高いギャラで4万5000円

時間割増率のほか、先述した「転用料」というものも支払われます。DVDが出る、テレビのロードショーで放映される、劇場放映で使われる、などの場合に発生する使用料ですね。例えば「テレビにかかるときは1.7倍」など、こちらも細かい設定があります。

ランカーのギャランティーに理論上の上限はありませんが、私の知る範囲で1番高いのは4万5000円程度でしょうか。それを超えるとフリーランク制になり、仕事1本ごとに値段の交渉をする形になります。

時間給は、台詞数などにはかかわらず完全に固定。30分喋り詰めだろうが、「おかえり」の一言だろうが変わりません。映画やアニメで、メインキャラクターの声優がモブキャラクターの声を兼任していることがままあるのは、声優を1人増やすごとに固定給として1人分のギャランティーが確実に発生してしまうからなのです。

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