地盤沈下に苦しむ石巻市、満潮時に床上浸水、通学・買い物にも支障
東日本大震災では、地震や津波のみならず、深刻な地盤沈下も発生。海水の流入による床上浸水の被害が一部の地域で広がっている。
「この地域では、80センチメートル近く地盤が沈下したと聞きます。満潮の時刻をいつも気にしながら生活しています」と語るのは、宮城県石巻市万石浦地区に住む丹野礼子さん(53)。「自家用車は車道に置けないし、外出する際は長靴が必要。こんな状態が続くと安心して住むこともできない」(丹野さん)。
■「安心して住めない」と語る丹野礼子さん(右)
万石浦は、石巻市の東部に位置する入り海で、カキやノリの養殖が盛んな景勝地だ。大震災では津波による被害は少なかったが、地盤沈下による浸水被害が住民を苦しめている。
5月1日午後2時過ぎ。満潮の時刻が近づくにつれて、万石浦地区の住宅地や国道に水がたまり始めた。地盤沈下がひどい地区では、満潮時には住宅の床上まで水が浸入した。
千葉修さん(56)宅では、震災後、2度にわたって満潮時に床上浸水に見舞われたうえ、この日もまた、床上浸水に。「1階では電気も水道も使えず、やむなく2階で生活している」と千葉さんは話す。
2階には水は来ないものの、柱や一階の床は水浸しで、家の中はじめじめした状態。「いつまで住めるのか」と千葉さんは不安を感じている。妻と子ども2人は近くの中学校で避難生活を強いられている。
■千葉修さん宅の軒先
江戸時代の塩田跡を造成した「万石浦ニュータウン」に住む千葉康広さん(43)の近所は液状化がひどいうえ、「大雨や強い風が強く吹くたびに海水が庭先まで流入してくる」(千葉さん)という。「余震とともに大潮がいちばんの心配の種。買い物に行くのも一苦労です」と千葉さんは話す。
区長(町内会長)を務める中鉢正良さん(63)は「市役所も状況はわかっていると思う。ただ、現時点までに具体的な対策は講じられていない」と語る。