「クルーズ船集団感染」研究で突き止めた真犯人 ダイヤモンド・プリンセスを襲った空気感染

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乗客・乗組員3711人のうち、700人以上が新型コロナウイルスの検査で陽性となったダイヤモンド・プリンセス号では、何が起きていたのか。研究で明らかになってきた(写真:アフロ)

新型コロナウイルスの感染が拡大し続けている2020年にあっては、ダイヤモンド・プリンセス号の悲劇ははるか昔の出来事のように思われる。1人の感染者がこのクルーズ船に乗り込んだのは1月20日。その1カ月後には乗客・乗組員3711人のうち700人以上が検査で陽性となり、多くが重症化した。この侵入者はアガサ・クリスティーの『オリエント急行の殺人』の犯人のごとく、事件を調査する医師や保健当局に断片的な痕跡しか残さなかった。

以来、科学者は新型コロナが船全体にどのように拡散したのかを正確に突き止めようと試みてきた。というのもダイヤモンド・プリンセス号の集団感染は、新型コロナ感染に関する最も貴重なケーススタディだからだ。これはいわば瓶詰めされた実験。世界でこれから起こる出来事に重い警告を投げかけているだけでなく、データも豊富に詰め込まれている。

何が感染を拡大させているのか?

科学者らは拡大鏡のような道具(ウイルスの世界的な拡散パターンを明らかにしたコンピューターモデル)を使って、感染予防をめぐる中心的な問題でありながらも、きわめて微視的な疑問を解き明かそうとしている。ウイルスは厳密な意味で地域や建物、少人数の集団の中をどのように移動しているのか、最も警戒すべき感染経路はどれで、そうした感染を食い止めるにはどうしたらいいのか、という疑問だ。

ハーバード大学とイリノイ工科大学を拠点とする研究チームは新たな報告の中で、ダイヤモンド・プリンセス号の客室や廊下、共用エリアでウイルスがどのようにして人から人へと感染したか解明を試みている。

この研究によれば、感染を最も広げているのは顕微鏡でしか見えないような微細な飛沫であることがわかった。これらのマイクロ飛沫はとても軽いため、空気中を数分間、あるいはそれ以上にわたって浮遊する。

この発見は主要感染経路をめぐる医師、科学者、保健当局者の議論をさらに過熱させるものだ。7月上旬、200人を超える科学者からの警告を受けて、世界保健機関(WHO)はウイルスが屋内で空気中にしばらく漂い、それが新たな感染を引き起こす可能性があることを認めた。

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