「飲食店の路上利用緩和」ができない街の末路 単なる飲食店救助策と捉えると見誤る

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飲食店の路上利用の緩和の機会をうまく活用できるかどうかは、自治体のあり方を問われることにもなる(写真:ohagi reiko/PIXTA)

飲食店の路上利用を一時的に促進する緩和策が話題を呼んでいる。6月5日に国土交通省道路局が新型コロナ対策の緊急措置として11月末まで道路占用基準を緩和すると発表すると、13日に公共空間に特化したウェブマガジンを展開するソトノバが開催した当局専門官を招いてのオンライン勉強会には全国から240人が参加し、質問が殺到した。

担当部署では緊急措置公表以来、飲食店や自治体、各地の議員からの問い合わせで電話が鳴りやまないという。

今回の緊急措置は3密を防ぐため、風通しのいい店先の路上にテラス席や売り場を設けたいとの飲食業界などのニーズを受けたもの。原則として幅2m以上(通行量が多い場合は幅3.5m以上)の歩行空間を確保する、施設付近の清掃に協力することなど一定の要件を満たした場合には、路上にテーブル、いすなどの仮設施設を置いての営業が認められる。

飲食業以外の業種や、合意が得られれば2階以上や地下、沿道以外の店舗も対象になる。また、歩道のない車道でも、交通規制等で安全な歩行空間が確保できるならテラス営業などが可能に。清掃などに協力している場合には占用料は免除だ。

警察がオーケーを出した驚き

この緩和措置が驚きを持って受け止められたのは、通知の中に「警察庁交通局と調整済みである」の一文があったためである。道路は、法が道路法と道路交通法に分かれていることからもわかるように、使用するためには国や都道府県、市区町村などの道路管理者と管轄する警察それぞれから占用許可、使用許可を得る必要がある。

ところが道路管理者である行政が使いたい、使わせたいと思っても、安全面から警察がストップをかけることもしばしば。近年、道路にテラス席を設けるなどの社会実験が各地で行われるようになってきたが、実施のためには半年、1年とかけて組織を作り、協議を重ねるなどの必要があった。そして実験であることから、期間限定で日常にはならない。

ところが、今回は11月末までといいながらも、あらかじめ警察との協議が肯定の状態からのスタートとなる。道路が各種営業のために使いやすくなるのである。ただ、これを民間事業者の救済という意味だけで捉えると本質を見誤ることになる。それどころか、これを活用できるか否かが、自治体や町の将来的な「価値」を左右しかねないのである。

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