老舗大手が100店閉鎖!英国を襲う消費激変 ネットだけが敵じゃなかった
日本の小売業者にとっても他人事ではない。英国で老舗小売り大手、大型ディスカウントストア、スーパー、レストランなどが次々と店舗数の大幅縮小に迫られている。今年上半期ですでに総計約3万5000人の雇用が消える見込みだ。
5月、老舗小売り大手「マークス&スペンサー」が、2022年までに100店舗を閉鎖すると発表し、英国内に大きな衝撃が走った。1884年創業の通称「M&S」は国内で約6万人を雇用する小売業で、海外30カ国のフランチャイズ店を含めると約8万人が働く。英国では目抜き通りに必ずあるのがM&Sで、ここを中心に商店街が形成されている場合が多い。衣料品販売の小売りでは最大規模を誇り、「加熱するだけ」の食品の販売でもその質の高さを誇ってきた。
M&Sに何があったのか
そんなM&Sが全1035店舗のうちの10%を閉店すれば、多くの雇用が影響を受けるばかりか、地域によっては商店街瓦解の道も作ってしまう。M&Sがあるからやって来た人が来なくなれば、コミュニティ崩壊にさえつながる。
M&S経営陣にとって、店舗閉鎖は苦肉の生き残り策だった。 2008年には10億ポンド(約1450億円)あった税引き前利益が、2017年3月期には1億7600万ポンド(約254億円)に下落。さらに、前2018年3月期は店舗閉鎖費用負担もあり、6680万ポンド(約98億円)と前期から62%も激減しているのだ。
低迷の理由は、一言でいえば「市場の競争に負けた」こと。その端的な例が、主力の衣料品販売の不振だ。M&Sといえば英国人が真っ先に思い浮かべるのは、家族全員の下着がそろい、多くの女性が心をときめかすようなデザインで、かつ価格も手ごろな衣料品がそろっていることだ。
調査会社「グローバルデータ」によれば、衣料品販売市場でM&Sが13.5%のシェアを占めてトップの座に君臨していたのは1997年。今でも首位の座はかろうじて維持しているものの(7.6%)、その後ろには僅差(7%)で廉価の衣料販売チェーン「プライマーク」が控える。「M&Sの洋服には魅力を感じなくなった」という女性買い物客の声が報道されるようになって久しい。オンライン・ショッピングへの対応が遅かったことも指摘されている。
M&Sは時代の波に十分に迅速に対応できないままに、大規模な店舗閉鎖に追い込まれた。が、崖っぷちに立たされているのは、M&Sだけではない。
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