仙台は「地下鉄東西線」開業で不便になった? 「鉄道」と「バス」の連携に課題
もちろん、東京や大阪といった大都市は人口も多く、鉄道とバスが並行していても充分に採算がとれるという点も無視はできない。ただ、仙台の例で見るように、鉄道とバスが連動して公共交通網を充実させるという理屈の上では極めて機能的なシステムが簡単には機能しないのは、こうした背景もある。
地方都市を見ると、鉄道とバスの並行路線を整理してフィーダー化して成功している例もある。そのひとつは、コンパクトシティを推進していることで知られる富山市だ。
富山市では、廃線に向けて議論が進められていた旧国鉄富山港線をLRT化し、さらにバス路線もLRTに連絡するように再整備を行った。成果は充分に出ていて、富山ライトレールはローカル線復興のモデルケースともされるほどになっている。
ただ、「フィーダー化のポイントのひとつは低床車両。バスを降りたら目の前にある駅までバリアフリーですぐに乗れることが重要だった」(同社)と言うように、長い距離を歩かせることになる地下鉄との乗り換えとは事情が異なる。
また、市内に6の地下鉄路線と複雑なバス路線網を持つ名古屋市交通局は「市内のどの場所からも500m以内にバス停があり、さらに最低でも1時間1本の運行本数を維持するようにしている」(同局営業企画課担当者)としており、フィーダー化には消極的。「経営にプラスでも市民の皆様に不便をかけるわけにはいかない」(同前)と言う。
実は少ない鉄道とバス乗り継ぎ
2010年に行われた大都市交通センサスでは、鉄道末端交通機関としてバスを利用しているのは首都圏・中京圏・近畿圏いずれでもわずか10%程度に過ぎず、首都圏と近畿圏では60%近くが徒歩で駅まで向かっているという結果が出ている。これを見ても、鉄道とバスを同時に利用していくというスタイルは、特に都市部ではなかなか難しいということなのだろう。
利便性を高めるはずの鉄道路線の開通が、同時に行われるバス路線の再編でかえって不便になるという不幸な結果。もちろん利便性が向上して喜んでいる人も少なくないだろうが、公共交通という存在である以上、“不便になった”という結果はできる限り避けなければならないだろう。鉄道とバスの“共食い”を防ぐなら、沿線観光地とのタイアップなど考えられる手段はほかにもあるはずだ。
仙台市営地下鉄東西線開通に伴う仙台市バスの再編は、1年をめどに見直されることになっている。果たして仙台市はどのような結論を出すのか。単に“地下鉄ができて便利になる”と言って終わりにするのではなく、見守っていく必要があるだろう。
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