2016年の日経平均は年央高・年末安とみる 年初の短期的リスクは米経済指標の下ブレだ

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ただし述べたように、現在の日経平均株価の水準が売られ過ぎだと考えており、徐々に海外投資家の復帰で2015年最終週から2016年第1週にかけては、リスク混じりながらも株価は上値をうかがうものと見込んでいる。そうした年末年始の流れの中で、さらに期間を狭めて今週(12月28日~12月30日)の日経平均株価は、1万8700円~1万9500円を予想する。

2016年の展望については、世界的に景気の持ち直しが想定される(ただし国別の格差は大きい)ため、欧米主要国などの株価はおおむね、年末に向けて緩やかな上昇基調をたどろう。しかし日経平均株価については、やはり企業増益の流れに沿って、6月ころまでに2万2000円超えを示現すると見込むが、年後半は軟調展開をたどり、年末は2万円前後に下押している可能性が高いと考える。このように年央髙を予想する理由は、主に2つある。

7月の参院選と2017年春の消費増税

1つは7月の参院選だ。ダブル選挙になるかどうかはわからないが、政府・与党は選挙に勝つため、景気刺激に前向きな姿勢を示すだろう。とはいっても、魔法のように経済を一気に改善させる策はない。これは政府が悪いわけではなく、誰が考えてもそうした策は思いつきにくい。政府が地道に細かい政策を積み上げる一方、民間企業は政策を当てにすることなく、血のにじむような自助努力をたゆまず重ねることが必要だ。

それでも、市場は政府の「姿勢」は好感するだろう。また海外投資家も、経済政策の実効性が高いかどうかは別にして、政府が景気改善に向けた努力をみせるかどうかを注目している。ただし、特にダブル選挙になって与党が大勝すれば、その後は、政策の重点が再度安全保障等、経済ではない方向に向かう可能性がある。

2つ目は、2017年4月に予定される消費増税だ。前回税率が5%から8%に引き上げられた際は、消費増税が景気に与える影響は限定的だとの意見も多く、市場は「では、実際に増税になってから、どうなるかみてみよう」という構えだった。しかしふたを開けてみれば景気下押し効果は大きかったため、次回の増税に対しては、「きっと2014年と同様に、大きな悪影響があるのだろう」と、おそらく2016年後半のどこかで、株価は織り込み下落する展開になると懸念される。こうした年央髙、年末安シナリオを覆すリスク要因としては、3つ挙げられる。

1)中国経済はだらだらと長期にわたって景気減速を続けると予想するが、減速ではなく大幅な失速に至り、不良債権問題の爆発なども引き起こす展開

2)原油価格下落は多くのエネルギー消費国にとってプラスだが、産油国経済が減速するにとどまらず大きく悪化して、そうした諸国の財政が破たんし、大規模な産油国国債のデフォルトや政権崩壊を招く展開

3)米国短期金利は緩やかな引き上げとなろうが、長期金利が制御の効かない急上昇となる、あるいはジャンク債(格付けの低い債券)市場の崩壊を招き、ジャンク債を保有する投資家の破たんや借り換えに窮するジャンク債発行企業(非米国企業を含む)の倒産が多発する展開

ただし現時点での可能性は限定的で、メインシナリオとしてこれらを見込むには至らないだろう。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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