北越紀州が大王製紙社長らに巨額賠償請求 資本関係めぐる対立からついに裁判ざたに

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保有比率2割超の大株主だけに、今回の株価下落の影響が大きく出た。CB発行決議を受けた9月の株価急落局面において、北越紀州が保有する大王株式の価値は、同社が依頼した第三者評価機関の分析によると最小88億~最大126億円の範囲で毀損。今回の訴訟はこのうち最も少なく見積もった金額88億円について損害賠償を求めるために提起したという。

株価下落をめぐって、株主が会社や経営陣を相手取って損害賠償請求訴訟を提起した例としては、直近では不正会計事件を起こした東芝のケースがある。西武鉄道、ライブドア、オリンパスなど過去の不正会計事件でも同様の訴訟が提起されて、最高裁や地裁などで個人株主などへの賠償が命じられたケースもある。

しかし、今回の大王の株価下落は不正会計ではなく、CB発行という、れっきとした資本政策に伴うもの。「CB発行に伴う株価下落に対する損害賠償請求は、たぶん初めて」と北越紀州側も認識している。東芝やライブドア事件などに比べ、前例の乏しい損害賠償請求訴訟だけに、裁判の帰趨は読みにくい。先の見えない北越紀州と大王の争いの背景には何があるのか。

資本関係と業界再編を軸に対立が激化

北越紀州が大王を持分会社化したのは、2012年にさかのぼる。当時、内紛を抱えていた大王と大王の創業家を仲介する形で、北越紀州が創業家の保有する大王本体の株(保有比率2割程度)とグループ会社群の株を買い取り、グループ会社群の株は大王に譲渡し、大王本体の株は北越紀州自らが保有し続けた。とはいえ、いわば「小が大を飲む」形で持分会社にされたことに、大王側の不満は小さくなかったようだ。

その後、両社の間では、大王の関連会社(当時)による北越紀州株の買い集め(2013年2月発覚)や、北越紀州と業界6位・三菱製紙の販売会社統合案破談(15年4月)をめぐる非難合戦、大王株主総会での2度にわたる北越紀州による佐光社長選任への反対投票(13年6月と15年6月)など、対立劇が繰り返されることになった。

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