商品や技術の“かけ算”で勝負する--花王・澤田道隆新社長
また美容は健康とも密接な関係がある。花王が持つ健康の商品と、カネボウも含めた美容の商品を“かけ算”することで独自の展開ができると考えている。たとえば店舗カウンセリングで肌の状況をチェックする際、生活習慣のことまで踏み込めれば、若さを保つためのより本質的な提案ができる。資産となる技術や商品はたくさんあるが、今はそれぞれが単独であるような感じ。店頭カウンセリングという機会を駆使し、これらをうまくつなげられれば、花王ならではの世界を作れると思っている。
--成長の柱と位置づける新興国では、P&Gなど世界の競合に遅れを取っています。
中国、ロシアなどでは富裕層をターゲットとしたビジネスがいい方向に進んでいて、日本で培ってきた技術を存分に生かせる。一方で市場拡大が著しい中間層に向けたビジネスは、まだまったくできていない。競争は厳しいが、われわれの成長のためにここでの戦いは避けられない。
一つ言えるのは、高単価品の機能を削っただけの安い製品を投入するつもりはないということ。おむつでも高単価の製品に付いている「おしっこサイン」のような機能を削れば製造コストは下がる。だが、そんな風に中間層を侮ってはいけない。彼らに真に求められる価値をシャープに出せるよう、必要であれば中間層向け製品のための技術開発も行う。
製造・販売の面でも世界の強豪に比べずっと劣る。十分でない部分については現地企業との業務提携、M&Aなどあらゆる手段を駆使して補強する。そこに差別化できた商品が入り、新たな気づきや驚きを与えられるコミュニケーションができれば、勝ち目はある。まだ実例を紹介できないのは残念だが、楽しみにしていてほしい。
(長瀧 菜摘、撮影:尾形 文繁 =東洋経済オンライン)
*週刊東洋経済2012年7月21日号掲載記事に一部加筆
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