商品や技術の“かけ算”で勝負する--花王・澤田道隆新社長
日用品国内最大手の花王。直近2012年3月期の営業利益は1085億円(前期比3.8%増)と小幅ながらの2期連続増益を確保したが、かつて24期連続増益を記録した05年3月期(1213億円)の水準には戻っていない。成熟化する国内市場への対応、新興国開拓の遅れなど課題は少なくない中、今年6月に就任した澤田道隆・新社長はどのような成長戦略を描くのか。
--国内の日用品は販売競争が厳しさを増しています。
デフレ傾向が続く中、各社の商品レベルは上がってきている。もはや他社より多少性能がいいだけでは、価格競争に巻き込まれてしまう。その中で自分たちがどういうことをするべきかを考えないといけない。われわれの根底にある「よきものづくり」という考え方は変わらないが、この“よき”に込めるべき意味合いは時代によって変わってくるはずだ。
われわれは、安いものに追随することはしない。日常使うモノはそこそこの品質でいいと考えてしまうと全然面白くなくて、トイレタリーや化粧品という製品を通して生活や文化を変えられるような、あるいは社会的課題を解決できるようなものを作りたい。車でいえばハイブリッド自動車や電気自動車が出てきていてわかりやすい。日用品だって「たかが日用品」の範囲に収まらないようなものを、もっと作れると思う。
かつて洗濯用の粉末洗剤は自転車にも積めないような巨大な箱だったが、花王が『アタック』の小型化に成功すると、他社も含め1~2年ですべて小さな箱になった。あれだけ文化を変えられて、輸送面でもメリットを出せたのだから、これからだってやれると思う。
--具体的にはどのような商品を考えているのでしょうか。
今は健康や高齢化、環境などがキーワード。これまで世になかったような課題に対して、自分たちの製品を通じてどう貢献できるかと考えている。ただメタボ対策ひとつとっても、現在展開しているトクホ飲料の『ヘルシア』だけでは不十分。食用油の『エコナ』は非常に厳しい状態(09年に販売中止)になってしまったが、きちんと対応を続けながら、調味料やサプリメントも含めた食品分野で健康に役立つものを出したい。