「Gゼロ」後の世界 主導国なき時代の勝者はだれか イアン・ブレマー著/北沢 格訳 ~米国の重要な役割は変わらないとご託宣

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そこから四つのシナリオが想定される。米中がパートナーシップに基づいて責任を分担する「G2」のシナリオ。米中が敵対関係になる「冷戦2・0」のシナリオ。G2を基本としながら他のいくつかの強国がリーダーシップを分担する「協調」のシナリオ。そして、世界全体に権力が分散する「地域分裂世界」のシナリオである。

どのシナリオが実現するにしても、米国が重要な役割を果たすことに変わりはない。米国に対抗するような政治的、社会経済的なイデオロギーを提供する国は出てきそうにない。中国は指導者にふさわしい世界的な“公共財”を提供することはできないだろう。米国が指導力を取り戻すためには、巨額の財政赤字と党派的対立を克服しなければならない。また、イデオロギーに傾斜した自らの外交政策が最良のものでないことを認める必要があると、著者は指摘する。

では日本はどうすべきか。詳細は紹介できないが、著者は「日本語版への序文」で「Gゼロの世界は、日本が経済を成長させ、安全保障を強化するための新しい貴重な機会を提供」していると指摘している。

内容はややハードだが、夏休みの読書として挑戦しがいのある本であることは間違いない。

Ian Bremmer
調査・コンサルティング会社ユーラシア・グループ社長、米ワールド・ポリシー研究所上級研究員。スタンフォード大学にて博士号取得。フーバー研究所のナショナル・フェロー、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所を経る。

日本経済新聞出版社 2520円 267ページ

  

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