「Gゼロ」後の世界 主導国なき時代の勝者はだれか イアン・ブレマー著/北沢 格訳 ~米国の重要な役割は変わらないとご託宣

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「Gゼロ」後の世界 主導国なき時代の勝者はだれか イアン・ブレマー著/北沢 格訳 ~米国の重要な役割は変わらないとご託宣

評者 中岡 望 東洋英和女学院大学教授

 著者は、世界で最も積極的に安全保障問題で論陣を張っている論者の一人である。スタンフォード大学の博士号を持つ学者であるが、国際政治のリスクを分析する調査・コンサルティング会社ユーラシア・グループの代表者として常に現実の世界と向き合っている人物でもある。

本書では、現下のリーダーなき国際政治をテーマに分析する。第2次大戦後は、米国の圧倒的な指導力に基づく「G1」の世界であった。だが、米国の経済力の衰退とともにG1は主要先進国で構成される「G7」に取って代わられる。さらに2008年の世界金融危機以降、中国やインド、ブラジルなどの新興国を加えた「G20」へと姿を変えていく。

しかし、共通の価値観と目標を持たないG20は実際的な指導力のない「記念写真を撮って、格調高い原則論を宣言する」だけの組織である。世界は現在、指導者なき「G0(=Gゼロ)」という“真空状態”にある。著者はG0は「災厄を生み出す孵卵器」であると分析する。ただG0の世界政治は移行期であり、どこが次の時代のリーダーシップを取るかが問題だとする。

著者はG0後の世界を予測するために二つの問いを投げかける。米中がパートナーとなるのか、敵対するのか。米中以外の国が独立した役割を果たす力を持ち得るのか、である。

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