大規模デモ勃発の中、大飯原発が再稼働、それでも脱原発へ「一歩前進」の評価も

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1996年に住民投票で原発建設計画を白紙にさせた「反原発勝利」の歴史がある新潟県巻町(現・新潟市)で1970年代から反原発運動に関わってきた元高校教師、桑原正史さん(66)は「官邸を囲むまでの規模にふくれあがり、反原発運動は新しい段階に入った」と言う。

旧巻町は原発建設直前に住民が立ち上がり、住民投票を実施した。反対派が勝利し反対派の酒造会社社長が町長に就任、その後、建設計画は白紙撤回された。当時、反原発運動への風当たりは非常に強く、県議や町長など反原発派の立候補者には、自宅への火炎ビン投げ込み、毎日数十通の嫌がらせの手紙が届くなど迷惑行為は日常茶飯事だった。住民投票でも反対票を投じる市民は顔が見えないよう頬被りをしていたという。

しかし、福島第一原発事故を経た現在、ツイッターやフェイスブックなどSNSによる呼びかけで大規模デモが実現するようになった。

桑原さんは政・官・財・学を貫く原子力ムラの硬直性は、生半可なものではなく、すぐにドラスティックな変化は起きないと考えている。だが、「会社員や主婦が気軽にデモに参加し、電力会社の株主総会で自治体が原発依存脱却の提案をするということは少し前まで考えられなかった。今後、デモの場だけでなく日常生活でも脱原発を語れるようになれば大きな変化につながるのでは」と話す。

官邸前デモを主催した市民団体は今後も毎週金曜日のデモを続行予定で、7月16日には作家の大江健三郎氏らの呼びかけで東京・代々木公園でのデモが予定されている。市民の反原発へのうねりは今後も続く。

(麻田真衣 =東洋経済オンライン)

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