「レオ様」「PTA」のタッグ作《ワン・バトル・アフター・アナザー》が「映画賞を席巻」する背景

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そんなどこにでもいるようなアメリカ人が、行動しなければならない状況に追い込まれ、強権的な政治に市民の声が封じられる時代に、権力を恐れずに再び戦おうとする。それも、ただ愛する家族のためだけに。

今を生きるアメリカ人が感情移入するであろう要素がてんこ盛りの、タイムリーな題材を取り上げる作品なのだ。そしてそこには、権力に不満を持ち、社会に生きづらさを感じる世界中の人々に通じる普遍性がある。

最後まで結末が読めない

加えて、そのストーリーテリングが絶妙だ。

ありふれたアメリカ社会を映しながら、この物語がどこに向かうのかまったく予想できない。そして、ラストに近づくに連れて、どうにもならない事態を迎えるバッドエンドが頭をよぎる。

その結末は、因果応報という言葉が相応しい、誰もが納得できるであろう終幕に落とし込まれる。観客はそれまでの手に汗握る緊張の連続から解放されるのと同時に、強烈な余韻に浸るに違いない。

本作で後半のカギになる人物を演じた名優ベニチオ・デル・トロは、世界的巨匠ポール・トーマス・アンダーソンの手腕を「インディペンデント映画を高級で価値あるものに仕上げることも、大規模映画を派手に仕上げることもできる」と称する。

そして、この作品が大規模予算のいわゆるハリウッド大作でありながら、それらの多くのド派手で豪華絢爛なエンターテインメント作品とは一線を画する映画であることに言及する。

「この映画が、ハリウッド大作にありがちな欠如を補っているのは、人間性、ユーモア、キャラクターたちの失敗だ。本作には一面的な人物はいない。アクション映画であり、冒頭からラストまで大量のアクションがあるが、同時に人間たちが過ちを犯す姿が描かれる。欠点も見える。爆発やスタント、アクション映画のあらゆる要素に満ちていても、そのすべてを通してポールは人間の本質を探っている」(ベニチオ・デル・トロ)

センセイ
ベニチオ・デル・トロ(写真:『ワン・バトル・アフター・アナザー』(C)2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.)

そんなポール・トーマス・アンダーソン特有のクリエイティブによって、娯楽性がありながらも、まるでインディペンデント映画のような作家性の高い大作となり、観客を強烈に引きつける。

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