「レオ様」「PTA」のタッグ作《ワン・バトル・アフター・アナザー》が「映画賞を席巻」する背景
物語はそれから16年後に進む。いつしか酒と大麻におぼれる生活に浸るボブは、偏執的な被害妄想に取りつかれた状態になっている。活発で自立心の強い16歳の娘・ウィラ(チェイス・インフィニティ)とは、些細なことで口げんかをしながら、ふたりで田舎の電力網の外で暮らしていた。
しかし、何事も起きないまま過ごしてきた生活は、ある日一転する。彼の過去の革命活動を発端にする新たな事態が持ち上がり、ウィラがさらわれる。かつての急進的活動家とはほど遠い姿になっていたボブだが、過去の仲間を頼りながら、必死に娘を探す。
父と娘はともに、彼の過去がもたらす代償と向き合いながら生きる道を探す。
アメリカで高評価の理由
本作がアメリカで大きく注目され、高い評価を受ける背景には、ポール・トーマス・アンダーソンによる権力を揶揄する巧みなストーリーテリングに加えて、物語の題材が現在のアメリカ社会に渦巻く政治への不満や鬱屈をタイムリーに映している点があるだろう。
トランプ政権のもと、移民や人権、人種問題をはじめとするさまざまな強権的政治手法に、世界中が危機感を抱いている。そんな時代において、権力に抗う、社会に抑圧されたレジスタンスたちの活動には、爽快感とともに共感性が宿り、市井の人々の心を掴む力がある。
また、ボブは典型的なヒーローではない。若き日の勢いで激しい闘争に身を置き、指名手配を受けて逃亡した彼は、その後、革命家のヒーローとして仲間たちから崇められる。しかし実態は、愛する娘を守ることができず、そのために戦う力さえ失った中年のドランカーだ。


















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