もはや高級品?創業171年の老舗も撤退「駅弁崩壊」の衝撃、食の工業化に抗う浜松駅 "1個250円から"の新形態「おに弁」が売れる理由
サイズ感も絶妙だ。横10センチ、縦8センチ、厚さ3センチほどで、手に取るとスマホほどの大きさ。1個では少し物足りないが、2個食べるとしっかり満腹になる。「うま煮」が250円、「カツ丼」が350円で、2つ合わせても600円。一般的な駅弁の半額程度に収まるのも大きな魅力だ。
さらに、食べ終わった後のゴミが少ない点も見逃せない。コンビニのおにぎり同様、捨てるのは外装フィルムだけで、駅弁と比べると圧倒的に簡素だ。
崩れないご飯と染みないおかず
おに弁を製造・販売しているのは、浜松駅と掛川駅で駅弁を手がける自笑亭。後日、浜松市中央区神田町にある本社を訪ねて、話を聞いた。
自笑亭の創業は1854年、江戸末期にさかのぼる。浜松城主・井上河内守に仕え、料理を作っていた山本六兵衛が営んでいた料理屋「山六」がそのルーツだ。「自笑亭」という屋号も、「人の心を安らかにする自然な笑みが素晴らしい」と六兵衛を称えた井上河内守が名付けたという。
明治21(1888)年、旧国鉄浜松駅の開業とともにおにぎりを販売し、大正時代には浜松名物のうなぎ弁当も手がけるようになった。本格的に駅弁を扱い始めたのは昭和20年代後半からで、以来、浜松駅を代表する駅弁業者として、地域色豊かな商品を作り続けている。
「2022年に米穀卸の遠州米穀のグループ企業となり、米の消費量が減っている中で、新しい商品を作ろうという話になりました」と語るのは、営業部長の柏丈史さんだ。
惣菜作りのプロである自笑亭と、業務用炊飯サービスを手がける米のプロ、遠州米穀。そのタッグによって生まれたのがおに弁である。ご飯は、手に持っても崩れず、食べやすいサイズにする必要があり、グラム数を変えながら試作を重ねたという。
「おかずによって最適な量は変わりますが、140〜160グラムに落ち着きました。幕の内弁当のご飯は200グラムなので、十分食べ応えはあると思います。海苔を巻くことで強度も増しています」(柏さん)
おかずはすべて手作り。汁気のあるメニューは、あえて水分を抑えたり、粘度を高めたりして、ご飯に染みすぎないように工夫している。盛り付けも手作業のため、1日の生産量は200〜300個ほどに限られる。
「23年の発売当初は静かなスタートでしたが、最近はSNSで紹介される機会が増え、売り上げも伸びてきました。今後は急速冷凍したおに弁のネット販売も検討しています」(柏さん)
形は変わっても、土地の味と作り手のこだわりがしっかりと伝わる「おに弁」。効率や大量生産を追い求めるコンビニやスーパーではなく、駅弁業者である自笑亭が現場で試行錯誤しながら生み出した点に、大きな意味があると感じた。駅弁の未来は、決して悲観するものではない。そう信じたくなる一品だった。
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