もはや高級品?創業171年の老舗も撤退「駅弁崩壊」の衝撃、食の工業化に抗う浜松駅 "1個250円から"の新形態「おに弁」が売れる理由

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「井筒屋」が飲食事業からの撤退に際して、自社サイトに掲載した8代目当主・宮川亜古代表取締役の挨拶文は、駅弁を愛する者として、そしてフードライターとしても考えさせられる内容だった。サイトはすでに閉鎖されているが、以下に一部を引用する。

(前略)
旅のお供であるべき駅弁とは何か、その土地ならではの駅弁とはどういったものかを思い巡らせ、「味をえらび 味をととのえ 味ひとすじに」納得いただける商品をお届けしたいと、日々励んでまいりました。
しかしながら、昨今の食文化は娯楽化がもてはやされ、誤った日本食文化の拡散、さらには食の工業製品化が一層加速し、手拵えの文化も影を潜めつつあります。
そのような環境に井筒屋のDNAを受け継いだ駅弁を残すべきではないと判断致しました。
(後略)

「食の工業製品化が一層加速し、手拵えの文化も影を潜めつつあります」という一文からは、長年にわたり手作りの駅弁を作り続けてきた井筒屋の矜持がにじみ出ている。同時に、駅構内に並ぶコンビニの弁当が、本当に「旅のお供」であり、「その土地ならではの駅弁」と言えるのか——そんな問いを投げかけているようにも感じられる。駅弁を買う側である私たちも、文化としての駅弁を見直す時期に来ているのかもしれない。

おにぎりと弁当のハイブリッド商品

前置きが長くなったが、話を駅弁の価格に戻そう。物価高騰の影響で値上げを余儀なくされ、今や多くの駅弁が1000円超え。1000円以内で買える商品は、数えるほどしか残っていない。

そんな中、出張で静岡県浜松市を訪れた際、浜松駅構内で見つけたのが「おに弁」だ。真ん中を少しくぼませた四角形のおにぎりを弁当箱に見立てて、そこへおかずを盛り付けたスタイルで、まさにおにぎりと弁当のハイブリッドといえる。

売り場
浜松駅構内「エキマチWEST」にある自笑亭の売り場に並ぶおに弁(筆者撮影)

ラインナップは、浜松名物「うなぎ」や特産品の「しらす&三ヶ日牛」、彩り豊かな煮物をのせた「うま煮」をはじめ、「エビチリ」「カツ丼」「カツカレー」など、和・洋・中を取りそろえた全9種類。価格は250〜500円で、今回は「うま煮」と「カツ丼」を購入した。

「うま煮」は、里芋やレンコン、ニンジン、椎茸といった幕の内弁当ではおなじみの具材が、素朴な味付けでぎっしり詰まっている。ご飯が白米ではなく、しそ風味の「ゆかりご飯」なのも、煮物のやさしい味わいを引き立てるためだろう。

驚かされたのは「カツ丼」の完成度だ。玉子でとじてあり、甘辛いタレが衣に染みているにもかかわらず、ご飯全体がべちゃっとしていない。「うま煮」も同様で、汁気が適度に抑えられている。このあたりに、長年培われた駅弁作りのノウハウが生きていると感じた。

おに弁4種
手前右下から時計回りで「うま煮」250円、「うなぎ」500円、「カツ丼」350円、「エビチリ」350円(筆者撮影)
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