ワタミ、介護売却で問われる「居酒屋」の実力 売却資金で財務状態は大幅に改善

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介護事業売却で入ってくる資金は約210億円。9月末に5.9%まで落ちこんでいた自己資本比率は、30%超にまで回復するメドが立ち、急場をどうにかしのいだ格好だ。

210億円のうち、100億~150億円は有利子負債の返済に充てる方向であり、金融機関と目下交渉している。「これからは食中心のビジネスに集中する」(清水社長)としているが、負債返済後、投資に回せる資金は限定される。

通期の最終利益は、介護事業の売却もあって、130億円の黒字(前期は128億円の赤字)を確保する見通しだ。通期の売上高は期初の1488億円から1270億円へ、営業利益は13億円の黒字から均衡圏へと、それぞれ見通しを下方修正した。通期業績計画の達成には、残る主力事業である、国内外食事業と宅食事業の下期増益が必須条件だ。

専門メニューに特化した業態転換

「和民」「わたみん家」約400店のうち、改善がみられない3割の店は、地域の食材を使った店や、専門メニューに特化した店に業態転換を図る考えである。

9月に開業した「石巻酒場わたみん家」は、宮城県石巻市の地元食材を取り入れた試験店だ。メニュー変更前と比べ、売上高が約2割伸びたという。「和民の看板にはこだわらない」(清水社長)と、祖業である居酒屋の屋号すら手放す覚悟である。ただ、「年明け1~3月に店を類型化し、地域ごとに数店のテストをした後、4月以降、業態転換を進めていきたい」と清水社長は述べた。迅速に改革が進むかどうかは予断を許さない。

また宅食事業についても、会社側は「経費を抑制して増益を目指す」という青写真を描くが、競合が増える中で、配食数を維持するのは容易ではない。
 当面の財務状況は改善されるものの、収益柱の介護事業を売却する以上、ワタミが生き残るためには、外食部門の建て直しが欠かせない。限られた資金と時間の中で業績回復を図れるか。清水社長は難しい舵取りを求められている。
 

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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