日本の電力会社は規制の不確定性とコストの増大により困難が長引く《ムーディーズの業界分析》

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●リファイナンスリスクの増大が流動性の低下につながっている

福島原発事故以降、リファイナンスリスクが高まっていること、および社債市場での発行が不可能となっていること(原発を保有していない沖縄電力による比較的小規模の発行と、東北電力〈ムーディーズの格付けなし〉による2012年3月16日の発行という例外はあり)により、流動性は低下している。社債およびその他の固定金利商品について、投資家は、損失額および黒字回復の時期に関する疑問が残るかぎり、従来のような低金利での投資には消極姿勢を続けるであろうとムーディーズは考えている。

したがって、電力業界は短期・長期の資金調達をほぼ完全に銀行に依存している。銀行システムは引き続き、東京電力(ただし一定の留保条件付きで)を含め、業界に対して極めて支援的な立場を維持しており、電力業界は長期債務の返済を含む必要資金を確保してきている。

ムーディーズは、こうした支援が低下する兆しはないと見ており、銀行独自または当局の規制により銀行からの支援が制約されることについても、当面は懸念していない。電力会社は短・中期的(向こう1~3年の間)には、銀行からの融資によって、債務償還およびその他の必要資金を賄うことが可能であろう。

こうした支援は存在するものの、社債市場における合理的なスプレッドでの随時調達が困難な現状は、とりわけ超長期の資産基盤に対する長期資金が必要とされる電力業界にとっては、長期的に持続可能な資本構成を維持するうえで困難となろう。 新発債市場への復帰は、規制環境が安定化し収益性が予測できるようになることで、可能になるであろうとムーディーズは予想している。

●東京電力は業界内で引き続き極めて例外的な状況にある

福島原発事故の発生から1年以上を経た現在も、政府支援が東京電力(発行体格付けB1、見通しネガティブ)の信用格付けを支える主な要因となっている。東京電力の流動性は短期的には国内銀行団からの緊急融資によって支えられている。

東京電力の再生および収益性回復への道は依然として不確実であり、出資構成および経営体制の改革は緒に就いたばかりである。また、電源構成およびコスト構造の変化に伴い、電力料金の大幅な引き上げが必要となっているが、これは政治的に困難な課題となると考えられる。



写真提供:東京電力
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