中堅小売りのアオキスーパーが日本初となる核融合電力の売買契約をヘリカルフュージョンと締結、2030年代から供給スタート見込む
ヘリオン社はオープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)やソフトバンクグループが出資しており、今夏から発電所の建設に着手。28年の供給開始を想定しているという。
AIデータセンター、電力需要が急増
米テック大手が核融合発電に期待を寄せるのは、脱炭素化の推進に加えて、電力需給の見通しに強い懸念を抱いているためだ。AIの利用が急速に広がる中、ノルウェーのリスクマネジメント会社DNVはAI向けデータセンターの電力需要は、30年に足元の約10倍に達する可能性があると予測する。
東京都内で先週開かれた半導体の国際展示会「セミコン・ジャパン」では、甘利明・前衆院議員(半導体戦略推進議員連盟名誉会長)が基調講演で「いま世界が直面している課題は、生成AI向けデータセンターの電力消費だ」と指摘し、供給不足に警鐘を鳴らした。東京エレクトロンの河合利樹社長は「再生可能エネルギーの導入が追いつかず、データセンター稼働に伴うCO2の排出量は大幅に増える恐れがある」と話した。
もっとも核融合発電は技術的な壁が高く、これまで実用化の見通し時期は幾度となく先延ばしにされてきた。今回のブームについても「同じことの繰り返し」と慎重にみる向きもある。
とはいえ資源輸入国の日本にとってエネルギー自給率の向上につながるほか、関連技術の海外輸出に発展する潜在性を秘める。高市首相は科学技術政策担当相だった昨年7月、国として2030年代の発電実証を目指すと発表。政権発足後は半導体やバイオなどと並んで核融合を国家戦略技術に挙げ、25年度の補正予算では研究開発に約1000億円を計上した。
主要国が共同で参加する国際熱核融合実験炉(ITER)の建設計画が予定より遅れていることもあり、日本だけでなく各国が独自の開発に力を入れている。英国が計5000億円の投資計画を決定したほか、中国は年間2000億円規模を投じているとみられ、今年に入り四川省で大規模な核融合施設を建設していると報じられた。
みずほ銀行産業調査部の荒井周午氏は「日本は(ヘリカル型以外にも)裾野の広い核融合研究の基盤を有しているほか、原子力産業で培った大型プラントの建設能力や素材産業における強みを持つ」として有望性を評価する一方、「世界的な開発競争が加速する中で、日本が存在感を示すには継続的な投資が必要になる」との見方を示した。
(小川悠介 編集:橋本浩)
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