｢EF64形｣勾配路線の主力だった電気機関車の軌跡　中央本線や上越線などで活躍､国鉄生まれの｢山男｣

ここで、EF64形以前の勾配区間用電気機関車について少し振り返ってみよう。

先に挙げた碓氷峠のような特殊な区間を除けば、国鉄の勾配区間用電気機関車は戦前のED16形が最初の例であろう。上越線の清水トンネルや中央本線の電化に合わせて1930年代に製造された機関車である。戦後も1980年代まで青梅線などで活躍した。

EF16形も勾配区間を活躍の場とした電気機関車である。戦後すぐに貨物列車用として開発されたEF15形を改造した機関車で、1951年からまず板谷峠に投入され、次いで1955年以降は上越線の水上―石打間でも運用を開始した。重連で貨物列車を牽引する姿が印象に残る機関車だ。

上越線で活躍していたこのEF16形やEF15形などを置き換えたのがEF64形1000番台であった。0番台とは車体の外観が全く異なり、国鉄の電気機関車としては異例といえる側面が左右非対称のデザインとなった。

ブルートレイン「北陸」を牽引するEF64形1000番台。後ろに山手線の103系電車が見える（撮影：南正時）

「1000番台」の登場

1000番台は1980～1982年に計53両が製造され、上越線・高崎線で貨物列車のほか、ブルートレイン「北陸」「出羽」「鳥海」などの先頭に立ち、首都圏でもおなじみの機関車となった。

高崎第二機関区で「北陸」のヘッドマークを取り付けるEF64形1000番台（撮影：南正時）

それとほぼ同時期の1982年には伯備線が電化され、ここにはまず0番台、その後1000番台が投入された。山岳路線とまでは言えないものの、かつてはD51形の三重連が走っていただけあって勾配区間の多い路線であり、ここも今に続くEF64形の活躍の舞台となった。