鉄道復権の象徴「夜行列車」欧州で廃止相次ぐ実情 一方で「新規参入」も活発、明暗を分けるのは何か

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これらの夜行列車は、フランス政府とオーストリア政府から補助金が支払われていた。だが、ベルリン線の60%、ウィーン線の40%はドイツ国内を走行するにもかかわらず、ドイツ政府が支援を拒否していることにフランス政府が不満を抱いたことが、補助金の打ち切りと撤退を決定付けた一つの要因といわれている。

廃止になるとはいえ需要がなかったわけではない。むしろ逆で、週3便運行されていた列車はいずれも高い乗車率を誇り、オーストリア鉄道は2024年、新型車両の導入によって車両運用に余裕が生まれた段階でウィーン―パリ線の増強を図る意向すら示していた。

しかし、スウェーデン鉄道のケースと同様、ドイツ国内における線路工事と、それに伴う迂回運行や運休が多く発生。2024年には2カ月間にわたって運休を余儀なくされ、オーストリア鉄道は各国間のダイヤ調整不足に不満を訴えていた。運行開始初日にフランスの運輸大臣を招いて行われた大々的なセレモニーも、今では虚しい過去となってしまった。

ナイトジェット パリ フランス 運輸大臣
パリ―ウィーン間夜行列車の運行開始時、到着を歓迎するフランスのジェッバリ運輸大臣=2021年12月(撮影:橋爪智之)
【写真】クラウドファンディングで運行される「ヨーロピアンスリーパー」の列車

なお、ベルリン―パリ線に関しては、ここでも民間企業の「ヨーロピアンスリーパー」が、2026年3月から営業を再開することを表明している。

欧州でも夜行列車は「斜陽化」?

環境問題に対する関心が欧州で急速に高まっている昨今、夜行列車はその時代をリードする存在として一時はもてはやされた。だが、これまでに挙げたような動きを見ると、今や補助金なくしては存続も怪しい状況となりつつあるように見える。

スイスのバーゼルとスウェーデンのマルメの間で2026年春から運行開始の予定だった夜行列車も、スイス議会が補助金を否決したため、運行中止となった。

欧州 夜行列車 深夜のホーム
深夜でも多くの乗客が乗り込む夜行列車(撮影:橋爪智之)
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