鉄道復権の象徴「夜行列車」欧州で廃止相次ぐ実情 一方で「新規参入」も活発、明暗を分けるのは何か

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主にドイツ国内における線路工事の影響で遅延やルート変更が常態化し、1年間に約20本もの列車が運休となるなど問題も多かったものの、利用者数は堅調に推移し、とくに夏季は多くの列車が満席となるほどの人気を博した。

SJ 夜行列車
補助金打ち切りで廃止を決めたスウェーデン鉄道の夜行列車(撮影:橋爪智之)
【写真】ベルリン中央駅に到着したストックホルムからの夜行列車

しかし、スウェーデン鉄道のビジネスマネージャー、クリスター・リッツェル氏は、「一般的に、夜行列車の運行によって利益を生み出すのはかなりの挑戦である」と語る。

同氏は、たとえ多くの利用者があっても、収益性の低迷に悩まされ、補助金があってもあまり利益を得られない、加えて自社の力ではどうにも解決できない線路工事による遅延や運休による損失……とその苦しい胸の内を明かす。

そのうえで、スウェーデン鉄道は今後、ノルウェーのオスロやデンマークのコペンハーゲンへの接続に注力し、ドイツ方面は補助金がなければ再開するつもりはないと述べている。

民間企業は「補助金なし」でビジネス成立

では、スウェーデン―ドイツ間に夜行列車を運行することはもう難しいのだろうか。実は、同じ区間で夜行列車を運行する民間企業「スネルトーゲット(Snälltåget)」は、スウェーデン鉄道の撤退後も運行を継続し、編成も増強するという真逆の姿勢を示している。

スネルトーゲットは2007年から夜行列車を運行しているが、CEOのカール・アダム・ホルムバーグ氏は、これまで補助金は一切受け取っていないと語る。

スネルトーゲット 夜行列車
補助金に頼らず運営を続ける「スネルトーゲット」の列車(撮影:橋爪智之)
【写真】簡易寝台車のクシェットは狭いとはいえ横になって休むことができる

同社は収益性を高めるため、定員の少ない寝台車の連結をせず、クシェットと座席車で列車を編成している。リサーチによると、高額な普通運賃の寝台車に乗れる乗客は少ないため、より低価格で定員の多いクシェットや座席車だけで編成することで、乗車率も収益も高めるという工夫により、補助金なしで運行を継続することができている。

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