中高生の「制服代」が中1は約8000円、高1は約1万円上昇…授業料無償でも重い「教育費の家計負担」とどう向き合えばいい?

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──セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの調査によると、家庭が負担した制服代の平均額が中1は6万4656円、高1は8万621円と、昨年に比べて1万円近く上がっています。福嶋先生は同調査の助言や講評も担当されましたが、この背景をどうご覧になっていますか。

何十年も前から家計に占める子どもの制服費は上がり続けていますが、この1年でさらに上昇した理由は、物価高に伴う制服単価の上昇だけではありません。もう1つ、アイテム数の増加という背景も重なっているのです。

近年は女子用のスラックスや猛暑に合わせたポロシャツ、校章入りの靴下やベストといった具合に指定の制服アイテムが増えています。

多様化にも合わせて「より着心地がよいように」「選べるように」と、よかれと思って増やしているのだと思いますが、指定アイテムが増えれば当然、費用は上昇します。身体が大きくなれば買い替えが生じますし、靴下などは替えが必要で何点も購入することになるので、指定アイテムが多いほど負担は大きくなります。

また、保護者の「よかれと思って」の心情から費用が膨らんでいる状況も見受けられますね。

「学校から言われるがまま」買っている実態

――どういうことでしょうか。

福嶋尚子氏
福嶋尚子(ふくしま・しょうこ)/千葉工業大学工学部教育センター 准教授。専門は教育行政学、教育法学。公立学校運営に関わるお金の問題について研究。共著に『隠れ教育費』(太郎次郎社エディタス、2019年)、『だれが校則を決めるのか』(岩波書店、2022年)。学校事務職員の柳澤靖明氏と共にウェブサイト「『隠れ教育費』研究室」を運営(写真:本人提供)

例えば、スカートとスラックスが選べる場合。小学校時代にずっとズボンをはいていた女の子が、「中学校の制服は動きやすいスラックスにする」と言っても、親が「スラックスだけはいているといじめられるのでは」と先回りしてスカートも合わせて両方買うと、当然費用は高くなります。

制服のルールが変わった最初の年などもとくに混乱が起きやすく、「みんながこれを買うならうちも」と全アイテムをそろえがちです。学校が「全部買ってほしいわけではなく、これは選択肢のリストです」と思っていても、よほど丁寧に説明しないと意図は伝わりにくく、たいていの保護者は「念のため」とすべて買ってしまいます。

1万円も制服代が上がっているというセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの調査結果は、「言われるがまま買うために制服代が増えている」という実態も表しているリアルな数字だと思います。

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