朝ドラ「ばけばけ」小泉八雲「地獄です」 "結婚"理由に新聞社を解雇されたワケ

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またドラマでは、小泉セツをモデルにした松野トキが、ヘブン先生のもとで女中として働くが、失敗ばかり。物音を立てては、執筆中のヘブン先生をたびたび怒らせている。これもハーンの実像に近いようだ。小泉セツはこんなふうに語っている。

「その書く物は、非常な熱心で進みまして、少しでも、その苦心を乱すような事がありますと、当人は大層な苦痛を感じますので、常々戸の明けたてから、廊下の跫音や、子供の騒ぎなど、一切ヘルンの耳に入れぬようにと心配致しました」

部屋を訪れるタイミングも、キセルをコンコンと音をさせているリラックスタイムか、歌を歌って室内を散歩しているときを選んでいたという。

「そうでない時は、呼んでも分らぬ事もあるかと思えば、極小さい音でもひどく感ずる事もありました。何事につけこの調子でございました」

原稿に打ち込むと周囲が見えなくなるタイプだったようだ。一緒に暮らすのは大変そうだが、それだけ「文章を書く時間」を大切にしていたのだろう。来日前にはアメリカの新聞記者として筆を走らせていただけのことはある。

人気記者になるも解雇されたワケ

アメリカでの新聞記者時代には、正社員になるやいなや、凶悪事件の取材を自ら志願。ライバル紙もこぞって報道するなかで、事件の凄惨さに迫るハーンの生々しい描写は、インパクト抜群だったようだ。

イラスト解説を充実させるという工夫も功を奏して、ハーンの記事は大きな反響を呼ぶこととなった(前回記事「朝ドラ「ばけばけ」小泉八雲は凶悪殺人事件を追う記者だった。一時は路上生活も、抜け出した先で転機」参照)。

ハーンはその後、貧民街の住民たちを取材して生々しい声を拾い上げては、物語仕立てにして読者の興味を引くなど、精力的に記事を書き続けた。

厳しくも優秀な編集長のコッカレルにその才能を引き出されて、ハーンは24歳の若さで名物記者として、その名を馳せることとなったのである。

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