M-1挑戦終えた50歳市長、次の目標は"婚活と受験"。「政治家もキャリアブレイクが必要」と強調する真意とは? 太宰府市長・楠田大蔵氏を直撃
ただ、望外の結果を得たことでコンビの歯車は狂ったかもしれない。
高田課長は3回戦を政治ネタに振り切ることを提案した。
「2回戦突破で町おこしという目標は果たせたし、審査員や観客に伝わりにくい太宰府ネタは外した方がいいと」
中途半端にやってすべったら恥をかく。プロの芸人である高田課長が本気モードに入った。
一方、楠田氏はあくまで町おこしという立場。地元の話を盛り込まなければ市民に申し訳が立たないと感じた。3回戦前々日の11月2日、楠田氏と高田課長は市役所で話し合いをするはずだった。
その直前、市職員が飲酒して自転車を運転し、警察に切符を切られたとの報告が入った。
楠田氏は高田課長との打ち合わせを中止し、急遽不祥事対応に向かった。その後一晩考えて、3回戦の辞退を決めた。高田課長には申し訳ない。だがーー。
「よその市長をいじるというきわどいネタだし、無理だと思った。政治家はそういうもの。思うようにならないことはいくらでもある」
3回戦の出場者リストには蛙亭、ミキなど売れっ子コンビの名前があった。
「ミーハーなので、一線で活躍する芸人さんと同じ舞台に立ってみたかったというのはある。それだけはちょっと残念」
2回戦を突破した後、コンビニで買い物しているときに「M-1頑張ってください」と声を掛けられた。太宰府天満宮の宮司からも連絡があった。
「『市長さん出ているね』と宮司に連絡してきた方も結構いたようで、大会の注目の高さを改めて知った」
辞退後の反響はさらに大きかった。
「どこに行っても残念だねと言われる。市長を退任することを惜しんでくれているのかと思いきや、みんなM-1の話。私の退任は残念じゃないのかって、内心複雑です……」
退任前にM-1が花を添えてくれた
楠田氏は2期8年務めた太宰府市長を12月いっぱいで退任する。だから漫才で心おきなくよその市長をいじることができた。
同じ市長として「市長を辞めさせるのって本当に大変。伊東市長みたいになっちゃうと時間もお金もかかって市政が停滞する。市民も選挙の重要性を考える機会になったのでないか」とも思う。
自身のキャリアは浮き沈みが激しかった。2浪して東大に入学するも、在学中に市長をしていた父が公職選挙法違反で逮捕される。
「父にも悪いところがあったのだけど、当時は深く傷ついた。自分が代わりに政治家をやらなきゃと思うようにもなった」



















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