タイの自動車生産は今や絶好調

日本勢の独壇場に

 

その伏線はすでにあった。1月にはオランダ工場を12年末で閉鎖すると発表。欧州からの生産撤退は日本勢で初めてになる。仏プジョー・シトロエン(PSA)との資本提携が流れ、いまだ優先株の処理問題を抱える三菱自にとって、事業の選択と集中は必要条件だ。「欧州撤退」と「タイ増強」とは裏腹なのである。

タイから日本への逆輸入車という点で、ミラージュは日産マーチに続く。先行発売したタイでは、最低価格38万バーツと日本円で100万円を切る安さなどが受け、月販目標2000台を大きく上回る、1万7000台をすでに受注している。

エコカー政策の効果大 インドネシアの猛追も

ホンダや三菱自のように、日本の自動車メーカーがタイに投資する理由で最も挙げるのは、「輸出拠点としての魅力と、政府が進めるエコカー政策」(益子社長)だ。

というのもASEANは、域内市場統合を15年に控える。それに先駆け10年1月には6カ国で完成車の関税が撤廃された。特にタイはインドなどとFTA(自由貿易協定)を発効、アジアの輸出拠点として優位性を一層増している。

従来のピックアップトラックに代わり、成長エンジンとして期待されるのが小型車。07年に導入されたエコカー政策では1・3リットル以下の車なら1リットル当たり20キロメートル以上など、一定の燃費基準を満たすと、自動車特定消費税率が30%から17%へ減免される。8年間の法人税免除や部品の輸入関税引き下げもあり、製造業にはメリットが大きい。認定第一号となったマーチのほか、ブリオやスイフト、ミラージュもエコカーとして認められた。

先の洪水では、密度の高いサプライチェーン(供給網)という強みが一転して、弱みに変わった。生産が滞った結果、11年には初めて、インドネシアに販売台数で追い抜かれてしまった。

とはいえ生産ベースでタイの突出ぶりは依然際立つ。タイ自動車研究所によれば、12年の生産台数予想は210万台と、08年に比べて5割以上の伸びだ。うち半分は輸出に振り向けられ、アジア以外にも、オーストラリアや中東、むろん日本への輸出も多い。

タイ国内では、日系中心にサプライヤー(部品会社)がバンコク周辺に集積していたりと、産業基盤が分厚いのが強み。洪水リスクや人件費の上昇などの課題を抱えながらも、輸出基地として、ますます重みを増している。日本の自動車メーカーがタイで拠点を増強する動きは、当分やみそうにない。

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(週刊東洋経済2012年5月12日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

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