フジテレビ以外の民放キー局が"過去最高の売上高"を記録、それでも日テレとABCが「ダウンタウンプラス」にひれ伏す理由

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この「ダウンタウンプラス」に、テレビ局が過去アーカイブを提供するという。具体的には、関西準キー局・朝日放送テレビ(ABCテレビ)の『探偵!ナイトスクープ』と、日本テレビの『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』だ。新しいコンテンツだけでなく、過去のアーカイブも配信されるのは、ファンとしてはうれしいことだろう。

だが、ここでよくわからなくなる。テレビ局が松本氏が出演する過去コンテンツを配信サービスに提供するのは、松本氏がレギュラー番組に復帰するのとどう違うのだろうか。自社が放送する番組には出てほしくないが、配信チャンネルを始めるなら番組流して、というのはどこか変だ。

松本氏のトラブルは、『週刊文春』との訴訟合戦になった末、お互いに訴えを取り下げた。であれば、テレビで活動を再開すればよさそうなものだ。だが、曖昧な解決方法だったため、グレーなイメージが残り、テレビ局としては復帰にOKを出せないらしい。そうした中で、松本氏が中心となる配信チャンネルにテレビ局が過去の番組を提供したのは、いい収入になるからだろう。

テレビ局は前述のとおり、中間決算で過去最高の売上高を出した。とはいえ、放送事業の斜陽状況は変わらない。放送外収入を増やさねばならない中で、確実に利益が出るチャンネルとして「ダウンタウンプラス」は貴重なのだ。

インターネット上に配信してもコンテンツが必ず儲かるとは限らない中で、松本氏なら一定以上の会員数が見込めると踏んで、日テレもABCもゴーサインを出した。時間の問題で、他局も続くと筆者はみている。

「放送はNG、配信ならOK」が抱える大きな矛盾

だが、ここには大きな疑問も残る。放送では気にする松本氏のグレーなイメージを、なぜテレビ局は配信だと気にしないのか。倫理的に矛盾していないだろうか。

とくに日テレはつい最近、TOKIOのメンバーだった国分太一氏にハラスメント行為があったとして、その中身をまったく説明しないまま、番組から降ろした。コンプラに対する日テレの厳格な姿勢を示した格好だ。そんな同局が、配信だからといって、松本氏出演のコンテンツに日の目を見させていいのか。

放送は不特定多数だからダメで、50万人もの会員数を持つ配信サービスならOKというのは、つじつまが合わない。テレビ局は、見せかけではなく、本当のモラルを持ってほしい。

「松本氏の相方である浜田雅功氏は、松本氏の地上波復帰を『早すぎる』と考えている」という噂を業界内で耳にする。「ダウンタウンプラス」に出ないのも、その延長線上なのだろう。案外、いちばん真っ当なのは浜ちゃんなのかもしれない。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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