思うに今の日本経済は、約30年にわたる「トリプルゼロ」(物価上昇ゼロ、賃上げゼロ、金利もほとんどゼロ)という状態が終わり、物価も賃上げも上がり始め、金利も上昇過程にある。日経平均が5万円を超えているだけではない。東京都内の中古マンション価格が上がり、金価格も天井知らずである。
これらの現象の根底にあるのは、「お金の値打ちが下がっている」ことであろう。お金は価値を計る手段でもあるけれども、その「計り」の値打ちが下がっているのであれば、結果的に株や土地や金地金の価格が上昇するのは当然のことと言えよう。
思えば2008年のリーマンショックからこの方、世界中で金融緩和が行われてきた。日本でも2013年から「黒田緩和」が始まり、日本銀行が国債を大量に買い入れてきた。アメリカでは2022年からインフレが始まり、少し遅れてFRB(連邦準備制度理事会)が利上げに転じ、ここへ来てようやく収まりつつある。日本でもインフレ傾向が明らかになり、物価対策が政治の最重要課題となっている。とはいえ、「物価の番人」たる日本銀行は、諸般の事情でなかなか利上げを決断できそうにない。ということは、円安もしばらくは続くのであろう。
「インフレ令和時代」は新たな思考法と運用スタイルを
問題は、われわれの意識がこの変化についていけないことにある。あらためて先ほどの山崎氏の言葉を想起願いたい。お金が自由を意味するならば、お金が毎年のように減価する時代とは、われわれの自由が日々失われていくことを意味する。考え方を早く切り替えて、「お金を運用する」ことに慣れていかねばならない。
しみじみ平成の約30年間とは、「平らかに成る」時代であった。デフレ時代においては、下手に資産運用などは考える必要はなく、現金のまま置いておくことが正解であった。「住居は持ち家と賃貸、どちらが有利か」というお金にまつわる定番のテーマでも、賃貸が有利ということが少なくなかった。家賃は上がらないものだったから。それだって今後はどうなるかわからない。一方で住宅ローン金利も上がり始めているからね。
勤務先で何か嫌なことがあっても、平成は「我慢が正義」であった。下手に転職して環境を変えようとしても、それでうまくいく保証はない。むしろ現状維持を諦めた瞬間に、没落が始まるかもしれない。だったら、慣れた仲間と一緒にいるほうがいいのではないか。
しかるにこういうマインドセットは、令和の時代には忘れ去ったほうが良さそうだ。迷ったら動いたほうがいい。「なんでそんな面倒なことになるんだよ。俺はデフレ時代のほうが良かった」という人はきっといると思うけれども、物価も賃金も上がらない経済は、それはそれで困ったことである。
「物価と賃金の好循環」を定着させるとともに、新たな思考法と運用スタイルを身に着けていきたいものである(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。


















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