著名人のSNS発信で批判広がった北海道・釧路のメガソーラー、「新たな規制条例施行」も問題が解決しない複雑な事情
文化庁は、天然記念物に及ぼす影響を十分に確認せずに工事を進めた場合、文化財保護法に抵触し、罰則が科されたり、原状回復を命じられたりする可能性があることを事業者に伝えるよう回答。阿部文部科学相(当時)は8月26日の記者会見で「天然記念物が失われたり傷ついたりすることがないよう、市教委で適切に指導してほしい」と述べた。
日本エコロジーは北斗でのメガソーラー建設のほかにも釧路市内で多くの太陽光発電事業を手掛けている。釧路市議会9月定例会での質疑によると、日本エコロジーが行う事業計17件のうち、博物館にキタサンショウウオの調査報告書が提出されたのは10件。提出がなかったのが7件。このうち5件は調査が不要な非生息地だった。
博物館は調査が必要なのに報告書が未提出の2件について事業者に提出を求めた。この2件をめぐっては、後になって事業者から廃止届が出された。うち1件、釧路市昭和の事業地内には、オジロワシの営巣木がある。2月の住民説明会で専門家が懸念を表明し、毎日新聞も「事業地内に営巣木」と報じていた。
北海道は9~10月、北斗の案件について、日本エコロジーによる法令違反や手続きの不備を発表した。まず、同社が釧路市に出した伐採届では0.3haの森林を伐採するとしていたが、道が測量した結果、森林開発面積が0.86haに及ぶことがわかり、林地開発許可が必要な面積0.5haを超えていたため、工事の中止を勧告した。
2025年4月1日に盛土規制法による規制が開始された。同社は3月に北斗の現場で盛り土工事に着手したが、必要な届け出をしていなかった。盛土は4.5haの土地で最大1.68mの高さで行われた。道の求めに応じて、9月17日、届け出が出された。
3件目は、土壌汚染対策法により0.3ha以上の土地の形状を変える開発を行う場合、着工前の届け出が必要だが出されていなかった。道は届け出を求めるとともに同社に対し、土壌の調査を行うよう求めている。
釧路市からの要望を受け、国で法制度見直しが始まった
釧路市の鶴間市長は9月19日、環境省を訪れて浅尾環境大臣(当時)と会い、3点の要望を伝えた。また同日、自民党の環境部会と環境・温暖化対策調査会合同会議に出席し、太陽光発電施設をめぐる現状を訴えた。釧路市環境保全課の西村利春・太陽光発電施設対策主幹によると、要望の内容は以下の通り。
1. 地球温暖化対策推進法で、促進区域のみを自治体が定めることができるとなっている。抑制区域、禁止区域についても自治体で設定できるよう法律で定めてほしい。
2. FIT法の適用を受けない「非FIT」の事業も規制の対象となるよう、法律を整備してほしい。
3. 事業終了後の太陽光パネルについて、FIT認定事業者に義務付けられている廃棄費用の外部積み立て制度などの仕組みを「非FIT」の事業者についても設け、きちんと廃棄がされるようにしてほしい。
国は釧路市や専門家からの要望を受け、環境省が希少な野生動植物を保全するための「種の保存法」の在り方をめぐる検討に入るとともに、関係省庁連絡会議がスタートして検討が始まった。
全国で太陽光発電事業者と地域住民の紛争は続く。発足間もない高市政権で関係閣僚はメガソーラー規制の方向に賛同している。住民の不安が払拭され、希少な野生生物や自然が守られるよう、法制度を整え直すことができるのか。力量が問われる。
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