著名人のSNS発信で批判広がった北海道・釧路のメガソーラー、「新たな規制条例施行」も問題が解決しない複雑な事情

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市民活動が2年前から盛り上がり、市に対策を求める声が高まった。2024年10月の市長選でメガソーラーの抑制に積極的な現市長が当選。2025年6月には「ノーモアメガソーラー宣言」を出した。9月には「釧路市自然と太陽光発電施設の調和に関する条例」が成立、10月に施行された。

新条例は、出力が10kW未満のものや屋根置きのソーラーパネルを除き、2026年1月1日以降に着工する太陽光発電施設が対象。事業者は市長に申請し、事業計画を提出して許可を受けなければならない。

湿原に住む5種の生物(タンチョウ、オジロワシ、チュウヒ、オオジシギ、キタサンショウウオ)が特定保全種とされ、市街化調整区域のうち、特定保全種が生息する可能性が高い区域を特別保全区域に指定。事業区域に含まれる場合、事業者は生息調査の実施や保全計画の作成を求められる。

勧告や命令に従わない場合は事業者の氏名、住所、経緯などを公表する。罰金や過料などの罰則規定はない。

条例制定前に市はガイドラインを設け、事業者から届け出を受けて助言を行い、保全への協力を求めてきた。条例施行で、事業者にとっては「協力」が「義務」に変わり、生息調査の方法や時期も詳しく定められ、厳しい条件が課されることになる。

ヨシに抱き着くキタサンショウウオのオス。左側はメスが産み付けた卵のう。光をあてると青白く輝き、「湿原のサファイア」と呼ばれる(写真:NPO法人・環境把握推進ネットワークPEG理事長の照井滋晴さん撮影)
太陽光発電施設の近くを歩くタンチョウ(写真:釧路自然保護協会提供)

全国で批判が盛り上がったメガソーラー開発の事業者

「釧路湿原におけるメガソーラー開発」への批判を呼んだ釧路市北斗の現場で建設を進めているのは、株式会社日本エコロジー(本社・大阪市、松井政憲社長)。面積4.3ヘクタールの事業地で6600枚のソーラーパネルを設置する計画だ。

同社が2025年2月に釧路市昭和6丁目、同市北園の住民を対象に行った説明会には松井社長が出席し、全国17府県でのメガソーラー開発の実績を示した表を含む詳細な資料を配布して考え方を説明した。

冒頭、松井社長は「カーボンニュートラル、世界規模の地球温暖化対策、温室効果ガス削減のため再生可能エネルギー事業を遂行してまいります」とあいさつ。続けて営業部長が「事業は適法に進める。撤退はない」などの取り組み方針を説明した。

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