お金をかけずにマスコミにとりあげられるユダヤ式PR術 立川光照著
実はローカル・メディアは、一般の人が喜びそうなネタを常に待ち望んでいる。売れないタレントも生活が苦しいので、メディアへの露出とともにちょっとした生活援助を欲している。そういった相手が求める対価をきちんと理解できれば、宣伝費が出せなくても面白いネタや飲食券の提供といった物々交換によってインパクトのある宣伝が可能になるという。
店舗立地の悪さに悩んでいた美容室の例を挙げよう。著者はまず、美容師をタレント事務所に出張させ、所属タレントの髪を無料で切らせた。このことにより、「隠れたカリスマ美容師の店」というキャッチフレーズとタレントの写真付き記事をネタとしてフリーペーパーに提供することができ、掲載後すぐに駅前店並みの集客を達成したという。しかも後日、タレントが有名になったことで予約のとれない人気店になったそうだ。
まさに、個人商店、ローカル・メディア、タレントという、今まで報われなかった価値が相乗効果で活かされた事例だろう。この他にも、第4章では、ラーメン屋やショッピングサイトなど様々な業態の成功例を挙げ、具体的な口コミやキャッチコピー、ネタの作り方をわかりやすく紹介している。
第5章以降では、テレビに取り上げられるための法則を始め、フリーペーパーやコミュニティFMなどのローカル・メディア及びタレント事務所を動かす実践的なコツが明かされている。素人ではなかなか知ることのできない業界独特の事情や効果的なプレスリリースの作り方、交渉術などが解説されており、かなり参考になるだろう。
全国のタレント事務所も一覧となっているので、いざ実際に何かを売り込もうという時に便利だ。
主に小規模ビジネスに焦点を当てた内容だが、企業の大小問わず、広報・宣伝を始め採用担当者などメディアと関わる人全般におすすめの一冊である。なぜなら、そういった担当者が意外にもメディアの事情や仕組みを理解しておらず、絶好のPR機会を逃してしまっている残念なケースが少なくないからだ。本書を読めば、強引にマスコミをコントロールしようとするのではなく、マスコミを“自然に動かす”秘訣を知ることができるだろう。
東洋経済新報社 1470円
(フリーライター:佐藤ちひろ =東洋経済HRオンライン)
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