
イタリア人の審美観というのはなかなかのものだ。テスタロッサとともにすぐ思いつくのが1962年の「250GTO」。このクルマはノーズ先端部に3つの空気取り入れ孔を持つ。これが審美性を高めている。
じつは、これも現場で生まれたもの。テストコースでオーバーヒートを解決しようとしていた誰かが、金切りハサミを持ちだして、急遽、チョキチョキとアルミの車体を切ったんだとか。それだけなのに、美しい。つい脱線してしまったが、イタリアのモノづくりの根底にある美意識の存在を、849テスタロッサの説明を聞いて思い出した。
内燃機関を捨てない意味

フェラーリはつい先日、10月9日にブランド初のBEV「エレットリカ」の主要なスペックおよび技術概要を発表したばかりだ。そこにあって、プラグインハイブリッドの役割はいかなるものだろう。
「フェラーリのオーナーは、純粋なエンジン車を好む傾向にあるのは承知しています」とスペソット氏は言う。SF90ストラダーレと同様、たとえプラグインハイブリッドになっても、エンジンが非常に重要という”伝統”を受け継いでいるそうだ。
「フェラーリ車の要はエンジン。テスタロッサの名前をここで使ったのも(先に触れた500TRに端を発する)エンジンの歴史を想起していただきたいからです」
849テスタロッサのV8エンジンは、フェラーリが2013年に開発した「F154」シリーズなるもの。今回はターボチャージャー、シリンダーヘッド、エンジンブロック、排気マニホールド、チタンボルトなど、多くの部品を再設計し、エンジン単体で830CV(610kW)ものパワーを実現している。
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