「東ドイツの超特急」よみがえらせたファンの執念 朽ちた車両を動く状態に、目標は「国際列車運行」
VT18.16型の大きな特徴として、台車上に直接搭載された12気筒エンジンがある。
液体式変速機を備えた気動車では、車体に搭載されたエンジンから、変速機とユニバーサルジョイントを介して車輪に動力を伝達する方式が一般的だ。だが、この車両はエンジンと変速機を台車に直結させた珍しい構造となっている。ちょうど運転席と客室の中間に位置するサービスルーム内にエンジンを置いた形になっており、床下にエンジンを搭載する場合と比較して、客室内の優れた静寂性を実現している。
この特殊な構造を実現するため、動力台車の軸距離(ホイールベース)は通常と比較して1.5倍近い4200mmという非常に大きな台車が用いられている。


編成は、前後の動力車と中間客車2両の4両編成を基本構成とし、後に増結用として中間客車が増備された。増結の中間客車は2両まで連結することが可能で、最大6両編成を組むことができた。ただ、エンジン出力の関係で、増結中間車を組み込むと最高時速は160kmから140kmに低減した。
短かった全盛期
VT18.16型はベルリンを拠点としており、ベルリン―プラハ(チェコスロバキア)―ウィーン(オーストリア)間を結ぶ「ヴィンドボナ」号を筆頭に、ベルリン―マルメ(スウェーデン)間の「ベルリナレン」号や、ベルリン―コペンハーゲン(デンマーク)間の「ネプトゥン(ネプチューン/海王星)」号といった国際列車、ベルリンを起点とする都市間特急列車などに使用された。

とはいえ、この車両が現役時代の1960~80年代といえば「鉄のカーテン」によって東西間の移動は厳しく制限されていた。とりわけ東ドイツ人にとっては国際特急といったところで、それに乗って隣国まで自由に旅をすることなど、到底叶わぬ夢だったに違いない。
なお、この列車の主な運行区間の1つであるベルリン―コペンハーゲン間は当時、途中区間に航送(フェリーに列車を積み込んで輸送する方法)が存在しており、長編成の列車を積載することができなかったため、基本的に4両編成のみで運行された。
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