「東ドイツの超特急」よみがえらせたファンの執念 朽ちた車両を動く状態に、目標は「国際列車運行」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

登場後はとくに大きな問題もなく運用されていたものの、増結しても最大6両という短い編成では需要の変動に対応することが難しく、1970年代には早くも主要幹線の特急列車から退き、ローカル特急に転用されていった。1990年代に定期運用から外れると、4両編成3本と増結用の中間車数両を除いて廃車となり、残った車両たちも車庫の片隅で朽ち果てていくのを待つばかりという状況になった。

しかし、なんとかこの東ドイツの誇った「夢の超特急」を甦らせたい、という愛好家たちの願いが、壮大な復活計画へと突き動かすことになった。

愛好家たちの最終的な目標は、VT18.16型の完全な状態での動態復活で、「中部ドイツのための列車」というスローガンを掲げ、この列車を観光資源として活用することにあった。2014年8月には、ベルリンの車庫に留置されていた4両編成の所有者であるDB Museumから許可を得て、修復へ向けて車両の移動を開始した。

VT18.16 食堂車
食堂車のテーブルスペース(撮影:橋爪智之)
VT18.16 運転席
余分なスペースがなく意外と狭いVT18.16型の運転席(撮影:橋爪智之)
【写真】さすがドイツデザイン?古くても機能的な食堂車の厨房スペース

だが、その高額な資金調達は、わずか20人弱の小さな団体単独では困難だった。そこで、列車を運行可能な状態に修復することや、メンテナンス費用の資金調達を目的とした非営利団体「SVTゲルリッツ」が2018年に設立された。列車の所有者はDB Museumのまま、SVTゲルリッツへ貸し出すという形が採られている。

同団体は2019年から募金を開始。個人を含む大小さまざまな団体からの献金のほか、連邦政府デジタル・運輸省から337万ユーロ(約5億9200万円)、地元ザクセン州からも数百万ユーロの寄付金を得ることに成功した。たった20人弱からスタートした団体も、多くのボランティアが加入し、現在も復活へ向けて準備を進めている。

また、直接的な資金提供ではないが、日本の大手鉄道模型メーカーであるKATOは、世界で唯一となるVT18.16型の鉄道模型量産製品を発売していることで知られており、同車の復活に合わせてこの車両のHO・Nゲージ製品の再生産を決定するなど、現地での盛り上げに一役買っている。

KATO製模型 VIS社博士
KATO製の模型を手にする、VT18.16型の修復作業を引き受けたVIS社のマルコ・シューマン博士(撮影:橋爪智之)
この記事の画像を見る(37枚)
次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事