世界のサムスンでお家騒動が勃発 創始者の遺産をめぐり李会長が舌戦へ、韓国経済に悪影響?

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「父は私を呼び出し、『今、肩書きはいくつあるか』と聞いてきた。私が正確にはわからないが15ぐらいはあるような気がすると答えると、『おまえは全部できるか?』と聞き返してきた。父の表情は明るくなかった。その前から父から何かを感じていたため、『全部はできない』と言うと、『それならできることだけやれ』と言い、それ以上何も言わなかった」

孟煕氏はこの会話が「後継者としての立場から身を引けという最後通告だった」と振り返っている。

76年に李秉喆氏が胃がんと診断され、その手術前に家族を呼び寄せて「今後、サムスンは健煕が継ぐことにした」と告げられ、孟煕氏は後継者としての道を完全に絶たれる。

「そのころには、すでに父との関係には相当距離があったが、それでも私は、いつかは私にサムスンの大権を与えてくれるだろうと信じていた」。孟煕氏は、完全に後継者としての道を絶たれただけでなく、遺産分配でも徹底して排除されたという。

このときのしこりが、現在の訴訟へとつながったのか。とはいえ、兄弟間の舌戦には、「サムスンには、最大の支援者であり最大の顧客である国民を尊重する態度が見られない」(朝鮮日報)と指摘するほど、見苦しいものに映っているようだ。サムスンという企業の問題ではなく李一家の問題とはいえ、「双方のやり取りを見ていると、韓国の企業と企業家がどう思うか、心配になってくる」(同)。

2010年の売上高は260兆ウォン(約18兆円)、国内総生産(GDP)の22%を占め、株式の時価総額は韓国市場全体の25%、輸出の24%を占める巨大企業だけに、家族間の争いが韓国経済に悪影響を与えないか。海外から見ていても心配になってくる。

(撮影:鈴木紳平 =東洋経済オンライン)

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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