東急田園都市線「衝突事故」を招いた10年前のミス 「ATC完備」なのに…万全なはずの安全対策に死角
東急電鉄によると、回送列車は午後10時56分に長津田方面から3番線(渋谷行きホーム)に到着。午後11時01分に、引き込み線への移動を開始した。
引き込み線は、10両編成をちょうど停められる程度の行き止まりの線路だ。列車を確実に停めるため、この線路では終端部に近づくにつれ最徐行で走る必要がある。回送列車は終端部から約20mの位置で時速9kmと、制限速度を数km超えており、オーバーランを防ぐための安全装置「過走防護装置」(ORP)が作動した。
ORPの作動自体は「とくに珍しいものではない」(東急電鉄)といい、今回も正常に機能したが、これにより回送列車は本来の停止位置よりも約23m手前で停車。最後尾の車両が、その後やってくる渋谷行き各駅停車の進路にはみ出した状態となった。

各停の行く手に回送、でも青信号
田園都市線は全線でATCを導入している。ATCは、前方に支障となるほかの列車が存在する場合、自動でブレーキをかけて減速したり、停止させたりして衝突を防ぐ仕組み。信号は車両内の運転台に表示される。
今回の場合、渋谷行き各駅停車の進路を回送列車が支障しているため、本来なら各駅停車には「赤信号」が出るべきところだ。だが、実際には「青信号」が表示されていた。回送列車が進路上にはみ出していることを検知して信号システムに伝える「連動装置」の設定にミスがあったためだ。
そして午後11時04分。梶が谷駅の手前に差しかかった渋谷行き各駅停車の運転士は、回送列車の位置がおかしいことを確認して非常ブレーキをかけたものの間に合わず、時速40km超で回送列車の最後尾車両と衝突した。
衝撃で回送列車の最後尾車両は連結面寄りの車輪2軸が脱線。各駅停車も先頭から4両目までの進行方向右側側面に大きく傷がついたが、各駅停車の149人の乗客、双方の列車の乗員ともけが人はなかった。

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