ある寒い日、バスで鼻を啜ると…。「イタリア在住歴30年」の私が経験してきたカルチャーショック!「外国人はマナー悪い」と叩く人に"欠けた視点"

イタリアで暮らして30年になる私が、まだ来て間もない頃の話だ。寒い冬のある日、暖房が効いたバスに飛び乗り、座ってほっと温まると、ほんの少しだが鼻水が出た。私は無意識に、スンスン、と鼻を軽く啜っていたらしい。
すると隣に座っていたイタリア人の年配女性が、黙ってティッシュを差し出してきた。鼻をかみなさい、と無言で言っているのだった。私はびっくりして、そして顔から火が出るほど恥ずかしかった。
なぜこのイタリア奥様が私にティッシュを渡してきたのか。それは、イタリアでは人前で鼻を啜るのはマナー違反、気持ちの悪いこと、という認識が一般的だからだ。スス、だろうがズズーッ、だろうが、ダメなものはダメ。
逆に、日本では嫌われる人前で鼻をかむことは、イタリアではOK。セクシーな美人さんもおしゃれなイケメンくんも、必要とあれば誰もが派手に音を立てて鼻をかむ(食事の場に限っては、流石に敬遠されることのようではあるが)。
とにかく、日本の普通の家庭で生まれ育ち、鼻を軽く啜っただけで咎められたことなど一度もなかった私は、ところ変われば品変わる、とはまさにこのことだなあ、と感心するなり、恥ずかしいなり、複雑な思いをしたことを覚えている。
SNSなどで“外国人の批判”が目に付く
こんな昔の話を今、思い出して書いているのは、最近、日本のメディアやSNS界隈でやたらと目に付く「外国人」の文字がとても気にかかるからだ。「外国人はマナーが悪い」「外国人は公共の場でうるさい」「外国人は……」などなど。
私自身もイタリアでは「外国人」であり、私もイタリアの人たちからそんなふうに思われることがあるのだろうか?と不安が頭をよぎる。
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