森保一氏と栗山英樹氏が「いい人」なのに勝てる理由 岡田 武史 ×工藤 勇一が語る新しい時代のリーダー像

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岡田:そうした主体性があったからこそ、ドイツ、スペインという優勝候補の国を破る「ジャイアントキリング」を実現できた。それがカタールW杯での代表チームの強みであり、過去のチームとの最大の違いだったと思います。

工藤:たしかに森保監督は、いわゆる先頭に立って引っ張っていくリーダーとは違いますよね。

森保一氏と栗山英樹氏の共通点

岡田:僕なんかはまさに、森保監督とは逆の、先頭に立って引っ張っていくリーダーだったわけです。それで、横浜F・マリノスの監督時代に限界を感じ出して「どうしたらそうではないやり方ができるのだろう」と、ずっと試行錯誤してきました。

でも、これは性格的なものなのか、なかなかできない。僕の場合、すぐ地が出て「こうやれ」と言ってしまう(笑)。

今はスポーツ界全体を見ても、リーダー像は変わってきています。フラットで双方向の「キャプテンシップ」を持つリーダーが増えてきました。代表的なところでは森保監督、WBCで日本を世界一に導いた栗山さん。どちらも素晴らしい人間性を備えています。

これまでプロスポーツの世界で結果を残してきた監督は、サッカーならイギリスのチェルシーやスペインのレアル・マドリード、イタリアのローマを率いたジョゼ・モウリーニョ。

野球で言えば野村克也さんや星野仙一さんなど、ものすごく「クセ」がある人たちでした。ところが、あの2人にはあまりそれがない。栗山さんとは昔から仲がいいのですが、「こんなに人が良かったら、勝てないんじゃないか?」と本当に思ってしまうくらい、めちゃくちゃいいヤツですから。

岡田武史氏と工藤勇一氏

工藤:メディアを通じてのイメージですが、穏やかな人柄と笑顔が印象的ですよね。

岡田:以前、WBCに行く前に栗山さんとご飯を食ベていたら、こんな会話になりました。

「岡田さん。僕ね、日ハム(北海道日本ハムファイターズ)の監督の時、岡田さんから言われた言葉を紙に書いて監督室に貼っていたんですよ」「俺、何か言ったっけ?」と。

それは「小善は大悪に似たり。大善は非情に似たり」という言葉でした。

これは僕が京セラの創業者の稲盛和夫さんから学んだ言葉で、「真の愛情とは、どうあることが相手にとって本当に良いのかを厳しく見極めること」という意味です。

稲盛さんの意図は、こういうことだったのだと思います。

「人間関係の基本は愛情をもって接することにありますが、それは盲目の愛であってはいけない。上司と部下の関係でも、信念なく部下に迎合する上司は、一見愛情深いように見えても、結果として部下をダメにする。これを小善と言います。

『小善は大悪に似たり』と言いますが、表面的な愛情は相手を不幸にします。逆に、信念をもって厳しく指導する上司は煙たがられるかもしれないが、長い目で見れば部下を大きく成長させることになる。これが大善です」と。

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