JR奈良アクセス特急「まほろば」は観光列車なのか 「安寧・悠久」ツートップで攻め、近鉄を意識した?

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観光列車ではないことの表れなのか、今回の取材でJR関係者から「安寧・悠久編成へのリニューアルにおいて『あをによし』を意識した」という声は聞かれなかった。

とはいえ、同じ奈良へのアクセス鉄道という点で「あをによし」を知らないはずはない。要するに「あをによし」を意識するしないにかかわらず、JR西日本として奈良アクセス特急のあるべき姿を追求したということなのだろう。

安寧・悠久編成には半個室や販売カウンターがない反面、1編成あたりの定員は車椅子スペースを含め179人とあをによしの2倍以上あり、大量の乗客を運べるという点がそれを物語る。

あをによし 車内
窓側を向いた座席など観光特急らしい車内の近鉄「あをによし」(記者撮影)

実際、安寧・悠久編成は観光用途以外にも使われる。10月14日から平日に新大阪―奈良間で運行される通勤特急「らくラクやまと」でも運用される。通勤特急でも使うということもデザイン上で考慮されているはずだ。

観光と通勤を兼ねた特急に

奈良県令和5年度統計年鑑によると、近鉄奈良駅の2022年度乗車人員は950万人で1日平均に直すと2万6055人となる。定期客と定期外客の割合は52対48でほぼ拮抗している。

一方、JR奈良駅の2022年度1日平均乗車人員は1万5303人で定期客と定期外客の割合は60対40で定期客のほうが多い。この点からも安寧・悠久編成の導入は観光客増を見据えたものだけでなく、奈良在住の通勤客向けサービス強化という側面も見えてくる。新しいデザインの列車は通勤特急「らくラクやまと」の格好のPRとなる。

安寧 悠久 車両側面
「安寧・悠久」編成は通勤特急「らくラクやまと」でも運用される(記者撮影)
【写真をもっと見る】通勤特急にも使われるものの奈良らしさを前面に出したデザインの「安寧・悠久」編成と、観光客向けとしてさまざまな種類のシートを備えた近鉄の「あをによし」。それぞれの外観や車内の雰囲気は?

JR西日本は安寧・悠久編成を「観光列車ではない」と説明するが、奈良らしさを前面に出した優雅なデザインは、全国を走る観光列車と比べても遜色ない。観光客も通勤客も快適な乗車体験ができる列車として大活躍することを期待したい。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げ。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に定年退職後の現在は鉄道業界を中心に社内外の媒体で執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京交通短期大学特別教養講座講師。休日は東京都観光ボランティアとしても活動。

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